第6話 本物の不良


僕は何が起こったのかわからなかった。


いや、見るには見ていたし、よそ見をしていた訳じゃないんだが、兎に角気が付いたら彼は赤髪の不良の後ろにいて赤髪の不良は盛大にコケていた。


合気道?


にしては触ったという感覚もなさそうで、まるで武道というより魔法に近いなにかの様に見えた。


「くっ、てめえ!」


赤髪が反撃しようとして殺気だったが彼は意に介せずといった顔でおもむろに手袋をした後に手近にあった大きめの石を掴んだ。


「おい、卑怯じゃねーか」


赤髪は鼻白んでそうのたまったがなぜか少し笑っていた。


「そうか、うれしいか」


彼はそう言って同じ様に微笑んだ。


僕は混乱した。


先程の超人的とも言える身のこなしがあれば武器など使わずとも人数差をものともせずに制圧する事はできそうな気はしたのだが、なぜわざわざ武器になりそうな石を拾ったのか?


しかも赤髪の不良がうれしそう?


なぜ?

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