第5話


「それにさ、さっきっ言っていた挨拶だって広い意味での社会的ではあっても拘束性のないルール。つまりマナーって訳だ、なぜそんなルールやマナーを守ったり守らせようとしてるのかな?一番君たちの嫌いなものだろうに」


彼のまっとうな質問に不良のリーダーはやはり少し固まった。


「うるせーよ。俺のルールを守らせようとしてるだけだろうが」


「俺のルールというほど独創性が感じられないな、常識とかマナーとか言う言葉でさも自分の意見じゃなく沢山の人の意見を代弁している様に装って結局自分の思うように人を動かしたいだけの人間に見えるけどね」


「は?何言ってる。世間のルールだろうとマナーだろうと気に入ったら自分のものにして何が悪いんだ?」


「ふーんだとするなら長時間店の前にたむろしてるのはマナー的にどうなんだ?」


「店から言われてねぇから、分かんねぇな」


「そういうのを、ダブルスタンダードって言うんだよ。マナーを人に説くなら自分もマナーを守らないとな」


「うるせぇな。マナーもルールもクソ喰らえなんだよ!俺らはそういうクソみてぇなしがらみから自由なんだよ。お前と違ってな!」


「へぇ……じゃあなんでそんなに見るからに不良だと分かる外見や行動をしてるんだ?縛られたくないんじゃなかったのか?今のあんたらは不良はこうあるべきというテンプレートにガチガチに縛られてる様にしか見えないんだけどな」


不良のリーダーは二の句がつげなくなって黙り込んだ。


「さっきからごちゃごちゃうるせーバカが」


そういうが早いか赤髪の不良が彼に殴りかかってきた。

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