第10話 Victim
「置いてくよ!」
「待ってよ!」
「はやく〜」
少女は、友人に急かされて、てけてけと脚を動かして走る。
先を走るふたりは時々ふり返って呼びかけてくれる。
でも、足が遅いその少女は、なかなか追いつくことができない。
おにごっこをしたって、いつも真っ先につかまえられる。おにになったらしばらくそのままだ。
もう少しあしがはやければなって思う。
でもあそぶのは、楽しい。
友達もいるし、あしがおそいのはいやだけれども、あそびはそれだけじゃない。
「おそい〜」
「ソラもハルもあし、はやいんだもん」
「今日はなにする?」
「どろだんご」
「おみず冷たいからいや」
「じゃあ、かくれんぼは?」
「さんにんで?」
「あ、雪ふってるよ」
「え?ふってないよ〜?」
「ふってるよ!」
彼女たちのいる横で車が通り過ぎる。
ツンとくる車の匂いがした。
「くさーい」
みんなで鼻をつまんで顔をしかめるて歩く。
かえり道はながいけれど、ともだちと一緒ならそんなにながくない。
お話ししながら歩いているとすぐだ。
いつの間にか、前を歩いているはずの二人の姿が彼女の前から姿を消えた。
テレビのチャンネルが切り替わったかのように、プツリと視界が切り替わる。
ひとりぼっち。
ふたりとも、どこにいったんだろう?
暗くてよくわかんない。
こわい。
どうしよう。
「ソラー?ハルー?……」
彼女の口から出たのはか細い呼び声。
しかし、その声が誰かに届いた様子はなかった。
闇に飲まれ、どこにも響かない。
どうしようもなく、彼女は立ち尽くす。
涙が浮かんで頬を伝う。
嗚咽が漏れて、しゃくりあげる。
もう一度、助けを求めて辺りを見渡す。
それでも、その視線を受け止めてくれる何者もそこにはいない。
暗い。
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