第20話

「今から1時間の間に胸プレートをどれだけ取るか、或いは戦闘不能に陥らせるかを競います。降伏の意を示す場合はあちらのゴールポストまで移動し待機して下さい」


杏の手があがる。


「質問です。戦闘不能とはどういう定義ですか?送受信装置を破壊、もしくは手足をもぐとか」


「そこまではしなくて結構。相手の背中が地面に着いたことで戦闘不能とします」


チッと舌打ちしそうな表情を一瞬浮かべる。


「とにかく、相手の背中を地面に着けるか胸プレートをはぐで勝ち、ですね。了解。どちらも一緒だと……。あ、倒した時点で取れますね」


なんか、癪にさわる言い方をする。こちらを挑発しているのか。いずれにせよあと少しで彼女の実力はハッキリする。


「さて、開始まで。5、4、3、2、1。スタート!」


7機一斉に動き出すかに思えたが1機だけ少し後ろに離れて眺めている機体が。

番号を確認するとやはり杏であった。


「戦闘経験者かね?」

アダムスが尋ねる。

「分かりません。名前と現住所以外何も記入がありませんから。よく新規さんに登録できましたね」


テロ防止法等により出身地や過去の経歴が不明な者はバイトなどに枷がかかる。シンでも確か、この項目は確認必須の項目だったはずだ。


「新規ユーザーのチェックは私が全てやってはいるが、彼女のリストは見てないな」

アダムスは考えながら呟く。


「っと。動きだしたね」

モニターを指差す。団子になっている6体のうち、彼女から近い位置にいる1体に後ろからそっと近づき……。


「!!」


ガシャンッという鈍い音が響く。

足払いをかけたかと思った瞬間には既に激しく地面に叩きつけられていた。


そして、もう1体。

更に……。

次々に彼女の手に落ちていった。


全てを終わらせるまで数分。あっと言う間の時間だった。

全てが死角である後ろから攻撃を受け、全員が自分に何が起きたか分からないままの戦闘終了である。圧倒的な実力差、経験差だった。


「やはり、何がしかの…」

アダムスが言いかけたとき、無線に通信が入る。


「女神様〜。私も入れて下さい」

リアムからの通信だった。


杏vsリアムの戦い。

さて、軍配はどちらに……。









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