第17話

10分ほど手足を動かしたり、頭を動かしたりとアクターを操作してもらっていた。


そろそろ自分のスーツを通してアクターが動いているのが理解できた頃かな?


「次の段階へと進みたいと思いますがよろしいでしょうか?よければ左手をあげて下さい」


一斉に全てのアクターの左手があがる。


「O.K.では前のレバーを握って。左手のレバーを奥に倒すと前進、手前に倒すと後ろに下がります。右手のレバーは……。やってみましょうか(笑)」


最後まできちんと教えなかった。

それぞれの反応を見たくなってしまったから。


慎重に前進する者、一気に走り出す者。

数歩進み、数歩下がる者。

バランスを崩し転びそうになる者。

皆が前進後進のみの中、1体だけ違った動きをしている者がいた。


モニタでアクター視認する。

アクターの番号は8となっていた。


書類を確認する。8、8……。

見つけた、彼女だ。杏 玲香(アンレイカ)。中国的な顔立ち長い髪を後ろで1つに結んでいた。


「なかなかに面白い子がいるな」

いつの間にかアダムスが横に立っていた。

「みて見ろ、まわし蹴りまでくり出しとるわ」

アダムスは楽しそうに笑う。


「転んでも大丈夫なので存分にレバーを操作して下さい。転んだ場合は手前のスイッチん押して。8番の杏さん、他にどんな動作ができますか?」


彼女はあらゆる動作を滑らかに行っていた。ジャンプ、座る、かがんだ状態からのまわし蹴り……。


「杏さん、過去に経験ありますか?」

音声スイッチを双方向に替えてから問う。あまりにも不自然すぎる。


「いえ。経験はありません」


彼女はそれ以上何も答えなかった。


彼女との出会ったことで更に運命の歯車は思いもよらない方向へとシフトしていく。

今はまだ誰もそれに気付いてはいなかった。








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