第16話

「グランドに用意して」

ガレージに連絡を入れる。


無駄な座学よりも実際に操作して感覚をつかんでもらいたいと、アダムスにむりやり話しをつけていた。


グランドに10体のアクターが並んでいく様は圧巻だった。色は黒、高さは2mほどだがこんなに迫力あるもの、なんだろうか……。


グランドのそばに急ごしらえの建物が1つ。ここがアクターの頭脳となり手足となる場所である。


私のアクターはまだガレージの中で調整中とのことでここには待機していなかった。

グランドから遠く離れた自分の部屋からモニタを通してグランドの様子も建物の中も手にとるように見てとれている。

年齢も様々な10人全員がガチガチに緊張してパネルの前に座っていた。


……そろそろ時間かな?


「時間なんで始めたいと思うけどいいかな?」


音声スイッチを入れる。

一瞬にして全員の顔が強ばり、緊張のレベルがはねあがる。


「まずは深呼吸。いきなり難しいことはやらないから安心して。私はノルン。今回の訓練を担当します」


ザワッと空気が揺れる。周りをみまわす人、目を瞑り、手を合わせる人。色々な反応が面白い。


「直接に顔を見せられないけれどそちらの様子はしっかり把握できてるので心配いりません。では。スーツ着用もきちんとできてるようなので右奥のスイッチをいれましょうか?」


おお!と言う声があがる。コンソールにはアクターの見ている景色が映っている。

普段、自分たちが見ている景色とアクターの見ている景色の見え方は変わらず、不思議な感じがする。


「少し手足を動かしてみましょうか?何も考えないで自分の手足を動かしてみて。或いは頭を動かしてみたり。レバーなどは触らなくて。そのまま。ハイッ。どうぞ」


グランドのアクターが一斉に動き出す。

上を向いたり下を向いたりしているもの、手を動かしたり。様々にぎこちなく動いている。


こうして、私の訓練業務が始まった。

なのに実機で訓練。嫌な違和感を飲み込み、ひたすらに進む運命の車輪。もう、引き返すことはできない。






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