第15話

「決定事項なんだ、理解してくれ」

もう、何度目なんだろうか。

半ば、泣きそうな顔でアダムスは私に告げている。


私は大丈夫だからゲームに復帰したいと駄々をこねる。そして……。


「また、発作を起こしたいのかね。女神様がプレイ中に倒されたいのかね。無様に棒立ちになり蜂の巣にされて」


アクターが著しく破損、または操作不能などの場合、ゲームオーバー判定となり罰則で数日ゲームプレイ禁止となる。

シンゲームのシンボル的な私がそういう状態になってはどうなるか分かるだろう?とアダムスは説得に必死だ。


「もう、倒れないから……」

「そう言って3度も倒れたの誰?」

私の声をアダムスの声がかき消す。


リアもマルコも同じく私の部屋にいる。

マルコは心配そうに私とアダムスの顔を交互に見比べているがリアは違った。

冷蔵庫のスイーツをもしゃもしゃと平らげている。紅茶をズッとすすり一言。


「とりあえず、新規さんの訓練教官を引き受けたらいいじゃん。一応、広報なんだしさ。えっ、違う?ま、いいじゃん。なんか新しいこと、見つかるかもだしね」


リアの一言で私の訓練教官業務が決定してしまった。アダムスも何故かマルコもホッとした表情を浮かべる。


「末永く楽しくゲームを続けて欲しい」

一言だけそう呟いてアダムスは優しく肩に手を置き部屋を出て行った。


「なんかさ、アダムスと女神様、似てる気がする。なんでかなあ?」

私の顔をのぞきこみ、リアが呟く。


「どこも似てませんが?」

マルコはすかさず喰いついた。

「目の色も違うじゃないですか?」

髪の色くらいじゃないか、とマルコはまくし立てる。


……カラコン、なんだよ。私。


心の中でマルコに謝る。目の色は何故かアダムスと同じ緑だった。肌の色だけでも田舎にいる間は大変だった。目の色までそうだったらどうなったか。小さな頃からずっと黒のカラコンをしていた。だから誰も本当の私を知らない。教える必要もないと思っていた。でも……。


「何をどうやって教えたら良いのでしょうか?リアム様」

「うっわ、女神様が凄い皮肉を〜」


トゲトゲとした空気が一瞬にして和らいだ。実際、何をどうしたらいいのかわからないんだけど。


「女神様の一番弟子は私だし、素顔を知ってるのも私だけ」

小さくガッツポーズのリアム。

いや、だからさ。


う〜ん、ゲームで新規さんに訓練教官なんて必要なんかね?チュートリアルでよくない?


そこはかとなく違和感は覚えるが、それがなんであるかまでは考えることはなかった。







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