第9話
いよいよ、一般公開に向けてのイベントをするという前の日。
ハルキ、リアム、マルコの3人は中庭でノンビリとお弁当を広げお昼を楽しんでいた。
気持ちのいい風がゆっくりと吹き抜けて行く。マルコはいつもの緊張した顔でなくリラックスしきった顔をしていた。
「この3日、寝てないです」マルコ。
「私より美人だし。運動神経抜群」ハルキ。
「イベント終わったらどうするんだろ」リアム。
「次のイベントまた使います。心配ない」
イベントではスクリーンでゲーム風景を流し実機で操作説明するとか言っていた。
私のアクターは深紅の衣装をまとったクノイチだった。長髪を後ろで1つ結び。
180センチくらいの身長はどこにいても目立つ。まあ、私の性格からいって隠れて待伏せ、なんて絶対しないからいいけど。
正々堂々がモットー。
「実際、あれが戦場とかいたら怖いね。ゲームだからこそ楽しめるけど」
「ハルキたち、戦争知らない。あの戦争だって日本、アメリカ無事。私の国なくなりました」
マルコの祖国は諸外国の利権が絡み酷い有様だったと聞いた。たくさんの人が祖国を脱出し、日本やヨーロッパ、アメリカを目指したという。
「神城先生、恩人です。ハルキのお父さんですね?」
父は戦場カメラマンだ。正確に言えば違うのかもしれないが戦場で写真を撮り、現場の様子を報道する。難民を保護したりもすることがあるのだろうか?
「多分、そうだと思う。父とは小さい頃にあっただけ。母は知らない」
私はずっとおばあちゃんちにいた。
田舎にいて、肌の色の違う子を育てるのは大変だったろう。
「うん、神城は私の父。全く似てないけどね。帰ってきたら凄く優しくてさ」
何故だろ、話してたら涙出てきた。
「ママのお手製のケーキもあるよ。さあ、食べようよ」
リアが明るい声でしんみりした空気をはらう。
「イベントが大成功したらさ、3人でドッグタグ作ろうよ」
リアムが切り出す。
「賛成!現時点の階級と所属?名前と住所入れてさ。血液型も入れちゃえ」
私も賛成した。
「私、代わりに名前をサクラにして下さい。私の故郷、春にアーモンドの花が咲きます。サクラに似て綺麗でした」
最終的にドッグタグには私の名前、リアムの名前、サクラ(マルコ)と名前をいれ、シンゲームにて永遠の友人、と入れることが決まった。
「明日が楽しみだね」
リアムがかみしめるようにいう。
このとき運命の女神の手の中で静かに何かが動き始めていたのだ。
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