第7話
「急に電気とか流さないよね」
身体中に電極がくっついている。
モーションキャプチャーで動きを計測中。
「本当に、電気こないよねっ」
何度も聞く私にリアムがついに吹き出す。
周りのスタッフも苦笑いしている。
「こんなので何ができるのよ」
半泣きの私に
「後で、凄いの、見せます。約束です」
マルコが軽くウインクする。
マルコは再びモニターに顔を落とす。
神妙な顔でモニタをチェックしている。
「もっとリラックスです」
とハルキに笑顔を向ける。
スタッフも「手をあげて」とか「座って」とか指示を飛ばしている。
「次、蹴りお願いします」
『ドンっ』
物凄い音が響く。何か、重い音。
ビクっと飛び上がるハルキ。
作業服の胸ポケットに手を入れるマルコ。
スタッフはそのままフリーズしていた。
リアムが端末を落とした音だった。
「ごめんなさい。なんでもないよ」
リアムの消えそうな声にマルコは深く息を吐き出した。
「此処は日本でした。そんなこと、起きるはずないんですよね」
爆発音だと思い身体が反応しました、というようなことを頭をかきながらマルコは言った。
スタッフもつめていた息を吐き出し作業に戻る。
胸ポケットから何を出そうとしていたのか。わからないが危ない物だと言うのは確かな気がする。
「私の国はずっと戦いでしたから」
マルコはどこか遠くをみるように言葉を吐き出す。
ハルキの身体についている電極を1つずつ確認しながら
「ハルキ様のは凄いの、頑張って作ります。リアムはテキトーで」
マルコの思わぬ仕返しにその場のもの全員が吹き出す。仏頂面のアダムスすら大笑いしていた。他のスタッフも何人かは腹を抱えて笑っている。
「モーションキャプチャーなんか必要?
怖いんだけど。リア、笑ってるけど次なんだからね。知らないよ」
「ハルキさん、ビビリ過ぎです。」
スタッフからも言われてしまう。
「データは全て終了しました。お疲れ様でした。ハルキ様はデザインの打ち合わせへ進んで下さい」
シンのプレイヤは『アクター』と呼ばれる。広大なフィールドを武器を手に縦横無尽に走りまわり敵を倒していく。まるで映画のように『美しい一瞬一瞬を演じて』いくのがウリだ。各プレイヤはそれぞれが固有のアクターを作る。どれ一つ同じものはない。この時点でのアクターの登録数はまだそんなにいなかった。
ハルキ達が合流してから、大きく変わることとなる。まだこの時点では普通のゲーム、だった。
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