第4話

約束の日、指定された時間に駅についてみるとアダムスはすでに待っていた。


「ほら、やっぱりいたでしょう?」


リアムは『勝った!』と言わんばかりの表情で私に言う。


「定刻通りですね、ノルン様」

リアムには一切目を向けず一言だけ。


「私もいますよぉ」

若干むくれてリアムが返す。例のふくれっ面だ。

「もちろん、お待ちしていましたよ」

アダムスが思わず苦笑いしたのをみて吹き出してしまう。


「こちらです。歩いて5分ほどですが」

駅を背にして左方向へ歩き出す。公園しかなかったと思うんだけど?


「会社が公園まで含めてこの辺りを購入したのでもうすでに会社の敷地内ではあります。あのビルも、です」

最近、リニューアルオープンしたお洒落なビルも?どんな会社なの、シンって。


「戦争で破壊された地区を再開発して畑や宅地、商業や工業を興し新たな街を再生する企業です」


あの大戦から10年ほどが過ぎようとしていた。消えてしまった大国もあれば忘れらたように放置された国もたくさんある。

大戦前に先進国と呼ばれた国でさえ例外でなく、大多数が復興できずにいる。


そのなかで、日本は異質な国だった。

戦争のキッカケともなった謎の感染症も戦争終結と共に完全に患者、新規感染者が0という状態。加えて1年もかからず経済的復興をなしとげ、ネットの進歩は戦争前より格段に飛躍『ロスなしに地球の裏側とあらゆるスポーツの試合ができる』


「つきました」


超高級な私立学校のような建物にリアムと共に目が真ん丸になってしまった。

「建物の説明とゲーム、どちらを先に?」


もちろん、2人同時に叫んでしまう。

「もちろん、ゲームで。」


こうして私たちは『シン』と縁を結んだ。

シンプルなくせに妙にリアルな感触に飲み込まれてしまう。中毒性がある、というのか。軍隊並みに階級差があるのも魅力だったのだろうか。

いずれにせよ、運命の歯車は静かに、静かにまわっていたのだ。





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