この人と関わるんじゃなかった
「関わらなきゃよかったのに。
雨宮さんが美しすぎるからっ」
そう主張する英春の手をわかりますっと佐久間が握っていた。
……わからない、と思いながら、将生はその様子を見守っていた。
あいつと関わると事件じゃなくとも事件になるのに。
何故、わざわざ自分から関わりに行ったのか。
「俺なら近寄らないぞ」
と言って、
「毎日のように、用もないのに店に来てる人がなに言ってんですか」
と佐久間に言われてしまう。
「じゃあ、お前はなんか用があって此処に来てるのか?
珈琲を飲む、食事をする、花を見る、以外の用事で此処に来てる奴居るのか?」
と逆ギレしてしまった。
「いや、花を見るは関係ないのでは……。
立派な庭ですが」
と佐久間が言ったとき、ちょうど休憩で立ち寄ったらしい水宗が入り口に居て、小さく手を叩いていた。
「あ、私は用があって来たんだったわ。
琳ちゃん、これ、いいチーズもらったから」
将生の言葉に思い出したように、英春の近くに居たおばさんが立ち上がり、琳にビニール袋を渡す。
「ありがとうございます」
「おお、わしもあったんじゃ。
間違って、二冊同じ囲碁雑誌を買ったから。
あげるよ、琳ちゃん。
最新号だ」
窓際に座っていたおじいさんが雑誌を店の本棚に差した。
ありがとうございます、と琳が頭を下げると、今度は奥の席に居たおばあちゃんが、
「私は、
たくさんあって使いきれないから、琳ちゃん、店で使うか飲むかして」
と言う。
「ありがとうございます」
「……この店は、皆様のご厚意で成り立ってんのか」
と将生は呟いた。
庭側の入り口側の席に、いつの間にか居た小柴が腕組みして唸っている。
「困りました。
私はなにも持ってきていません」
いいんです、いいんですよ、小柴さんっ、と琳が慌てて言っていた。
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