琳の推理1
「安達さんは、アイスを食べながら、私に自分のアパートを教えてくれました。
それでわかったんです。
安達さんは、私を見かけたから、慌ててスーパーに入り、買い物をするフリをしたのだと。
そして、同じ頃、レジを済ませ、外で私を待って、アイスを渡したんです。
これから犯行現場となる予定のアパートを教えるために――」
真剣に語る琳の顔を見ながら、将生は、
やはり、こいつは変わっている……と思っていた。
いい男が、自分のために、わざわざ用もないのにスーパーに行き、アイスを持って待ってた挙句、自宅を教えてくれたら――
普通は自分に気があると思うもんだろうがっ、雨宮よっ!
しかし、こういう性格だから、こういう外見でも男が居ないんだな、と妙に納得してしまった。
確かに近寄りがたい美人ではあるが、いい大人だ。
これまでに誰からも誘われてないこともないと思うのだが。
この調子ではおそらく、誘われていることにすら気づいていないに違いない。
「ちょっとよくわからないんだが。
安達刹那が、お前に人を殺そうとしていることを匂わせたり、犯行現場を教えたりしたのは、なんのためだ。
ああやって、止めに入らせるためか?
じゃあ、彼は最初から、里中を殺すつもりはなくて、ああして、パフォーマンスをしてみせることで、里中を改心させようと思ってただけなのか?」
「違います。
ま、あそこまでの大人数が押しかけてくるのは想定外だったんでしょうけどね。
安達さん、長く此処に居すぎて、みんなと仲良くなりすぎたんですよ。
もう途中から諦めてたというか、やけくそみたいにというか。
もう来るなら来いって感じで、わざとホームセンターで常連のおばあちゃんが来るのを待って、ロープを眺めてみたり。
木曜夜八時という、具体的な時間まで匂わせてみたり。
ともかく、そうして、里中さんを殺そうとする現場をみんなに見せることにしたようです。
当初の計画では、庭に大量の毒草を栽培しているミステリーマニアのおかしな女と、その店に出入りしている警察関係者にだけ見せるつもりだったんでしょうにね」
今日一番のビックリだ、と将生は思っていた。
雨宮……。
お前、自分がちょっとおかしな女だと気づいていたのか……。
「で、事件を案の定、ちょっと早すぎましたが、小柴さんが止めに入りました。
……私、そこで安達さんは言うと思ってました。
『ありがとうございます、みなさん。
もう気が済みました』
と」
琳はそこで表情を曇らせる。
まさか……と将生は言った。
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