第23話「落ちない吊り橋」

 堕ちるということはどういうことか?

重力に引かれるということである。


 地球人達が地球の重力に反旗を翻し、外惑星移住から宇宙空間にスペースコロニーを作り出してはや一世紀が過ぎた。

 いまだスペースコロニーは地球に落ち続けているのだと地球主義者たちは騒ぎ立てるのだが、この先数万年をかけても実際にはスペースコロニーは地球の軌道から徐々に離れていっているだけであるし、相変わらず地球と宇宙の架け橋たるライトトレーサー総物流システムは未だに機能し続けている。

 それがどうしたという話なのかとふと思うかもしれないし、それでどうしたというんだとボケっとしてるかもしれないが、このライトトレーサー総物流システムがいかに画期的な宇宙への架け橋なのかを説明しよう。


 まず地球から宇宙に向けて物資を送るには第一宇宙速度とか呼ばれてる地球の重力と釣り合うだけのエネルギーで物資を打ち上げなければならない、とどのつまり燃料を噴射するロケットが無ければ人類は宇宙に行かれない、これがごく普通のことだった。 だが人類はこの非効率で非生産的な宇宙進出の方法にそろそろ飽き始めていた。

 確かに宇宙空間利用は喫緊の課題であるし、人工衛星があればGPSなど便利機能使い放題色々と便利放題なのだが、宇宙開発という名目で言うと、それは初歩の初歩であり未だにそこをずっと五十年やってきたのかと思うと人によっては何故未だに全ての人々は地球の重力に? となってしまう。

 そこで人々が開発したシステムがライトトレーサー総物流システムだ。


 このシステムの原理はそこまで難しいものではない、要するに地球の衛星軌道上に太陽光エネルギーを凝縮して放射する衛星を幾つも連動させて、地球からレールガンで投射された物資を膨大な太陽光エネルギーを活用して自在に加速させ、最終的に自由に衛星軌道からラグランジュポイントなり他の惑星の衛星軌道なりに移行させるという仕組みだ。


 え? レールガンのエネルギーはどこから来てるのかって? それも宇宙体位要綱発電がスターターとなっていて、安定したエネルギ―に関しては蓄電池に大量に充電されてるのでいつでも発射できるという具合だ、地球表面から発射すると何かと面倒なことが多いが、そこを今度はこのレールガンを巨大なフライトシステムを持つ定期航行空とぶ空母で運用するならば、成層圏近くから大気の摩擦の少ない所から発射できるという仕組みだ、この仕組みを利用して人類は軌道エレベーターに頼らずに大量の物資を毎日のように宇宙に打ち上げている。


 あ、ちなみに地球人を宇宙に上げるのは地道にエレベーターを使いますが、地球人分の質量以上のものはあっというまにレールガンで運べるという具合で、いまだに地球人は地球の重力に拘束されてるのは確かなようです。


 ですが、これも未来にはわかりません、ライトトレーサー総物流システムは記録を更新し続けていますし、最終的にはあなたも宇宙の藻屑に、いえ、宇宙の架け橋を通って、まあ決して落ちることの無いつり橋が保証されてると思って永遠の空を目指してみましょう。


 全ての人は宇宙を目指す。

 

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