第19話「猫のいない街。そこは、」

 電気飛行車が飛び交うフライハイウェイ、摩天楼というにはとてもじゃないが見上げることが出来なくなったとこ知らずの街並「トーキオー」 気づいた時には遅かった気づいた時には千メートルを越えるハイパービルディングが日本の総人口三千万人をトーキオーに抱え込んでいた。

 「ここから飛び降りてもせいぜい地下のインフラに吸収されるだけです、おやめなさい」「いいのよ、せめて町の養分にでもなってやるわ、このままこの国と沈んでいくくらいなら先に私から降りてやるの!」

 今日も異常者が一人わけのわからないヒステリーを起こしてという具合だ、「ワタグモは配備できてるか?」「フライハイウェイの交通整備は出来てますよ、にしても今日だけでもう三十件目ですよ? さすがにこれは」

 都民のフラストレーションが絶好調であることはよく理解している。 日本は超先進覇権国家群ABCDに包囲されその供給網を断たれた、毎日のようにサイバー攻撃が盛んにかけられテロリズムが日本に輸出されトーキオー以外の地方は全てテロリストのものになってしまっていた。

 「ここは蟲毒だ、要するに我々は世界の縮図として機能しろとABCD包囲網から犯罪者を流刑にするにあたって選ばれたんだ、我慢しろ」「我慢ならないわ! サヨナラ! アバーッ!」

 まったく忍者じゃないんだからこんなアクロバティックな真似をするものではない、千メートル下の暗闇の中に身を投げる、フライハイウェイの立体交差をぬって、落ちる人間より速い速度で追尾するワタグモが十匹連携姿勢をとって女を包囲した。

 「なによ! 本当に困ってる時には助けてくれないくせに!」

 ワタグモは女の下に先行するとパラシュート状の糸を噴き上げて女の体を包み込むと、とたんに浮力が生まれて落下速を徐々に吐き出される糸がワタグモのように構成されていくにつれてゆっくりとおんなは浮遊するように降下していく。

 「よーしそのままおろせよ、まったく警察の手を焼かせるんじゃないよ、お前さんは一体なんのつもりなんだ?」「猫よ! もう野良猫も住めない街だけどね!」

 猫が自殺する、そんな馬鹿な話があっただろうか? いやイエネコが絶滅危惧種で高度に管理されたトーキオーでは猫を飼うことは違法行為なのには変わりがない、今では猫のヴィジョンのみが生き残っている次第となれば、仕方も無いというものか。


 「この街に猫はもういないと分かっているなら飼い犬になることをお勧めするよ」


 猫と犬、あなたはどっち派だろうか? 少なくとも未来のトーキオーでは猫派は肩身の狭い思いをするだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る