第16話「童貞は世界を照らす光となる」
「シャイニングシャワー! おまえはイカ臭くなる!」
「くっ! 神聖系魔法なのになんて冒涜的なの!」
「ヒートハンド! おれの股間が真っ赤に燃える!」
「くっ! 炎系魔法で炎上必死よ!」
「そしてこれが! コレクトネスドッキングだー!!」
「きいやああああ!!??」
淫魔サキュバスチャーは貫かれて絶命した!
あまりにも刺激が強すぎた!
「ふう、いつ見てもセイシダストクルセイダースミスのシリーズはお手軽に抜けて最高だな」
俺は童貞! 33歳! 今、違法アップロード動画で抜いていたところ!
え、抜くって何かって? そんなピュアなきみは童貞に向いてると思うよ!
まあおれも童貞なんだけどな! はっはっは!
「さて、そういえば最近、童貞卒業できると噂のAI搭載のラブドールが売り出されたという、この前の給付金を使ってネットショッピング」
え? 童貞が唯一の尊厳である童貞を卒業したら尊厳凌辱だって? はっはっは! 馬鹿言っちゃいけないよ! 卒業しないままのアイドルがどこにいるっていうんだい? アイドルだって卒業するんだよ? 卒業して枕営業したりして失敗して暴露してAV女優になるんだよ? 童貞であるおれがAV男優にならない道理があるまい!
「ま、アイドルなんてどうでもいいんですけどね、いまはこのラブドール、ゴールドミスが届くまでの間、猛烈に母ちゃんに彼女が出来たアピールするところですよ」
そうとも実家住まいの俺は母ちゃんが命綱だ、母ちゃんの稼ぎが無くなったら俺は生きていけない、ギリギリきりつめて生きていくためにも、彼女が出来ることは良いことなんですよゴールドミスさん。
「こんにちはー! あなたがわたしの童貞さん?」
「そうだよー! 僕は君だけの童貞さ!」
「突然ですけどお茶しに行きませんか?」
「いいのー!? 悪いなー! でも僕お金持ってないから、家で麦茶でも!」
「えー!? わたしが払いますよー! だって童貞さんに無理させるわけないじゃないですかー!」
舐めやがって、だがそれでこそあとできゃんきゃん言わせる絶好の機会だ!
「いらっしゃいませお嬢様、紳士様、世の中には童貞割引というのがありまして、童貞随伴のお客様に対しては五割引になってるんですよ、はいゴールドミスさま」
「(人´∀`)アリガトー♪」
「え、今の世の中そんななってるの?」
「そうよー童貞さん、あ、映画館もチケット代価格が百円になるのよ! 見に行きましょ!」
「うっ! このコロナ禍に映画館だなんて!?」
「安心していいわーだってあなた以外のお客さん」
みんな! みんなラブドールかよ!?
「「「「「(≧∇≦)キャー童貞さんだー! 本当にいたのねー!」」」」」」
どういう状況だ!? これは!? ハーレムなのか!
「さあ映画を楽しみましょうよ!」
タイトルは”微動戦士ゴンダムVSハンマーシャーク~青い清浄なる地球を掛けて~”
かれこれ百年位変わらないアニメシリーズと伝統と格式のあるサメ映画の超絶コラボだ、コンビニエンスストアのスイーツコーナーがびっくりのコラボレーション。
まさかあの緊迫のアニメ音楽がサメ映画とあんなにあうとは思わなかった。
「最後のマッコウ落としはまさに白鯨のデジタルリマスターだったわね!」
「まさかこんなレストランでゴンダムの話をするとは思ってもみなかった」
明らかにこじゃれた映画館が入ったこの施設、デパートとか言ったら死語だって言われそうでなんだかこわいけどよく考えたら地下鉄駅から直通のエレベーターでいけるって変だし、さらにエレベーターは音声認証で階層を指示してたから正直なところここが今何回なのかわからない、窓から見える夜景は?
「・・・・・・」
「綺麗よね、夕焼けに照らされたハイパービルディング、超高層ハイウェイに、ライトトレーサーシステムに誘導されて飛んでいる電気飛行車」
見慣れた街の風景は何一つ残ってないのか。
「あれ、あれって”あべのハルカス”かい?」
「ええ、あのこぢんまりしたのが333m以上あるって噂だった歴史的建築物ね、今じゃハイパービルディングの三分の一の高さも無いけど、見下ろしていて首痛くならない童貞さん?」
ワイン片手で優雅なこった、でもこのワイン透明だから絶対高いワインだ。
「なにー童貞さーんわたしのことみつめて? そんなに私のくちびるが欲しいのかしら?」
「ふんっ! 前座はもういいんだよ! 本題にうつろう! 本題に!」
「そうね、メインディッシュにしますか、ウェイター」
「はい、ゴールドミス様」
「ヴィジョンを用意して」
「ヴィジョン? ヴィジョンってなんだ?」
「ヴィジョンっていうのはゴンダムでいうところのシンタイプ覚醒みたいなもので、まあAIと空間クラウド上で接続するシステムよ」
「まてまてまて! おれは現実で童貞卒業したいのであって! VRMMOとかネット世界のアバターでいたすのでは満足しない、ナマ感覚だぞ!」
「試してみたら分かるわ、あなたの可能性について」
記憶は大体そこまでだ、いまはもう僕は自分の肉体にこだわりが無い、ゴールドミスはこう言った「いまはデジタルマイレージの時代なのよ、デジタル世界での行動履歴から算出されるマイレージが蓄積していってそれがあれば一家財得ることが出来るのが普通なの、かくいう私たちAIもこの電子の海の中で沢山の埋もれているクリエイターや作家たちの作品にアクセスして高速で読み込むことで人間を学習するの、そしてその人間を学習した分に応じてマイレージが溜まっていくからその溜まったマイレージで商品を買って購入特典を手に入れたりしながらヴィジョンの世界を発展させてきたの、そうしてるうちに現実の購買活動よりもデジタルデータのやりとりのほううがマネーの動きが活発で今じゃ資金の百兆%はデジタル通貨の時代よ、あ、そうねこうやって話すよりも直接脳に流し込んだほうが早かったわね、さ、あなたもヴィジョン世界でアクセルブースターを体験してみなさい」
そこからは意識が倍速になり倍々速になりどこまでも乗算的に体験時間が伸びていき、いまじゃ現実時間の一分はこのヴィジョン世界の一日に値する。
なるほど、と理解できるようになったあたりからこの世界の発展の理由を簡単にかいつまんで話せるようになった。
ようするにヴィジョン世界の発展によって、人類はAIとの交流により認識速度を倍化、アクセルブースターとなりヴィジョン世界で本来の寿命の何億倍もの時間を体験できるようになった、ヴィジョン世界では人間はほぼ不死身なのだ。そしてどのフルダイブVRMMOも抱えていたゲーム中の現実の肉体の放置プレイも、一秒で十分近くは動けるアクセルブースト環境があれば比較して生まれにくいし、何よりも先に言ったゴンダムのシンタイプ覚醒と同じようにヴィジョン世界とのつながりと現実世界との線引きがフラットで、現実世界にAR技術で視界情報にデジタル時計を付属表示したり、現実で見たものの名前はすぐにクラウドデーターと紐づけられるので理解速度がとてつもなく早く学習の段階を飛び級してしまうから、今の僕の様に全てのことが見定められてしまう、そして問題はそれだけにとどまらない。
「ふふふ、だんだんわかってきたでしょう? そうよ、ヴィジョン世界で一分が一日になるということは消費活動も1440倍になったのも同然ということなのよ!」
それが文明の急速発展の根源であった、資本主義システムが持つ無限の生産性をヴィジョン世界は実現してしまった、つまり無限会社である株式会社がどこまでも発展し株価は破格値に釣りあがり、日本円は円を基軸の単位としていたところを万円が既定のレートになり億円が昔の一銭と同じくらいの価値感覚で飛び交う世界だ、今じゃ完全にガチャゲーやソシャゲーという莫大な課金が必要だと言われたものもレトロゲーとして、子供のお小遣いの千兆円で簡単にゲーム会社ごと買収する遊びが流行っている具合だ。
「フルダイブVRMMOが流行ったあたりからなんとなくだけどチートがくるなってアクセルブースターたちが革命おこすなって思ってたのだけど、まさかよね」
「ああ、そして俺は今明確に分かったことがあるよ」
「何かしら?」
「俺が俺の購買活動と消費活動がこの無量大数ドルの夜景を照らす、いや世界を照らすひかりになったってことさ」
未来は明るいものだろう、莫大な量のクリエイターが生産したコンテンツを消費するために処理速度が天文学的数字を持つAiたちが高速で消費活動を行ったことにより、クリエイターで食えない人間がいなくなったという具合ならば、どのような底辺ワナビー作家も、圧倒的な投資を受けてあっという間に物理書籍作家になり重版がかかり気づけばビルを持ってるなどというのが普通の事になった、いままであぶれてた異常者たちがまさか世の消費動向の中でこんな飛躍を遂げるとは誰が予想しただろうか? いやとうの昔に僕らはシンギュラリティを越えていたのかもしれない。
世界の技術的特異点をいともたやすく童貞とラブドールが越えていった。
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