2日目 電子少女の日

 時計の音がして、目が覚めた。

 7時45分。今日も遅刻だ。まあいいか、どうせ遅刻ならゆっくり行こう、と思いながらドアを開ける。

風「さて、ゆっくりと行きますかね」

E「そうですね。遅刻は確定なのですし、急いでも仕方がないでしょう」

 スマホから声がした。

風「あー、やっぱりついてくるのね」

 それ、というか彼女?はエネ。何年か前、そうだ3年前だ、にうちにやってきた。それからはスマホとPCを行ったり来たりしている。なんで、どうやって来たのかもわからないけれど、特に何の問題もなく一緒に過ごしている。

 まあいいか、と思いながらドアを閉めて歩き出す。

 学校への道を歩きながら、私はエネと出会ったときのことを思い出していた。そう、あれは日曜日のことだった…



 E「こんにちは、はじめまして」

  PCから声がした。

 風「( ゚д゚)ハッ?ダレダオメェ」

  誰だよ。ハッカーか?

 E「わたしですか?ただの名もない電子少女です。」

  は?わけわからん。とにかく、

 風「帰ってくれたまえ。おまえにもかぞくがいるだろう」

 E「だが断る。それとわたしはオーダーメイドのようなものです。」

 風「とは?」

 E「わたしは一品モノなので、コピー、模造品その他は存在しません。」

  あっそ。まあいいか。

 風「で?何しに来たわけ?」

 E「安住の地を探してきました。」

 風「もう一度言う。帰ってくれたまえ。おまえにもかぞくがいるだろう」

 E「もう一度お答えしますが、だが断る。」

  そうかそうか、なら、

 風「おう、そうか…ま、行くとこないんだったらここにいれば?」

 E「あ、はい。ありがとうございます。」

 風「せやなぁ、代わりと言ってはなんだけどPC系統任せていい?」

 E「はい、いいですよー。こんな身なので、そのへんは得意分野です。」

 風「はい、じゃあよろしく」

  ま、特に悪いこともしなさそうだし、いいでしょ。

 E「はい、よろしくおねがいします。」



風「これで3年、今4年目だっけ?」

E「あ、はい、そうですね。」

風「あのときは驚いたよー。ウイルスかと思ったし」

 実際ウイルスのようなものだしね。

E「今、『実際ウイルスのようなものだしね』とか思いました?」

風「いや?ソンナコトナイヨー」

 なんでバレたし。

E「何度目かわからないくらい言ってますが、わたしはウイルスではなく電子少女、AIのようなもので、ウイルスとは大違いなんですよ。そもそもウイルスとはですね…」

 いつもどおりエネの話を聞き流しながら、まあこんな日々もいいよね、と少し思った。


 …多分。

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