第26話 小説賞・新人賞に挑むならPCスキル必須

 現在『カクヨム』などでスマートフォンを使って作品を投稿されている方も多いと存じます。

 その作品でもし「小説賞・新人賞」を獲ってしまうと、あとが実に面倒です。


 なにが面倒かというとほとんどの場合「出版まではPCで推敲・校正をやりとりしなければならない」からです。

 よってPCでメールを扱えないと、出版まで漕ぎ着けません。


 また「やりとり」に必要なソフトやアプリケーションの扱い方に習熟していないと、それを憶えるだけで相当な時間がかかってしまいます。

 これでは、せっかく受賞したのに「紙の書籍」が出版されるまでに長い期間が経ってしまうのです。

 話題性がなくなってから出版されたとして、憶えてくれているファンがどれほど残っているのか。心もとないですよね。


 出版社としても「受賞作を次のコンテストまでに販売する」のがノルマとなります。

 なぜなら、次のコンテストの開催費用を賄うために、前回大賞作の売上を当て込んでいるからです。



 「PCが扱えないとプロとしてやっていけない」は事実です。

 とくに推敲・校正のやりとりで満足にコミュニケーションがとれないと、せっかくの受賞作も書籍化されず、忘れ去られかねません。

 また、書き手としてもせっかく大賞を獲ったのに、プロの仲間入りできずに書籍化がお流れになりかねないのです。



 PCは必須ですが、自力で環境を整えられるほどコンピュータに精通する必要もあります。

 たとえば家に光回線を開通する。その手続きから立ち会いまでを滞りなく行なえないとなりません。

 次にプロバイダ契約です。接続業者のプロバイダ契約がないとせっかく光回線を開通してもインターネットに接続できません。

 そしてWi−Fiルーターの設定もする必要があります。

 もちろんルーターを使わず光回線のモデムに直接パソコンを連結できるのですが、推敲・校正用に印刷するプリンタを買うことになります。Wi−Fiルーターを設置し、PCもプリンタもそれを使って繋いだほうがよい。

 さらにWi−Fiルーターがあれば、スマートフォンで執筆するに際しても、パケット代や通信容量を気にせず使えるため、オススメしています。

 動画配信サービスと契約してアニメやドラマ、映画などをスマートフォンやタブレットなどで観るにしても、Wi−Fiルーターがあれば通信関係の追加費用もかかりません。


 そして、大事なのは「初期設定だけでなく、トラブルにも自力で対処できる」だけのコンピュータスキルが求められる点です。

 出版社とは、書き手と編集さんがやりとりして、よい原稿を仕上げていくことになります。

 そのときやりとりが滞ることまでは想定していないのです。


 つまり、やりとりが滞るのも書き手側の責任になります。

 滞らせないよう、たとえ通信トラブルや機器トラブルが発生しても自力で直せるくらいでないと、書籍化はズルズルと遅れていきます。




 次に「やりとりするファイル」をどのようなソフトやアプリケーションで使うかです。


 『Microsoft Word』を使用しているところもあるかもしれませんが少数なはずです。iPhoneに入っている『Pages』も論外です。


 なぜなら、これらのソフトとアプリケーションは、一行の文字数を固定できません。

 つまり、印刷したときに見た目が不格好になりやすいのです。

 「自動カーニング」と呼ばれる技術のせいなのですが、そのことに詳しい方も少ないと思います。

 本来の「自動カーニング」は、たとえば句読点が行頭に来るようなら前行の末尾に詰めて入れたり、句読点の一字前までを次行に送って前行は文字間隔を広めにして体裁を保つためにあります。

 このため、文字数を正確に反映できませんし、詰まった行と広まった行とが混在して醜い紙面になってしまいます。


 そのため、JUST SYSTEM『一太郎』やAdobe『InDesign』のような、原稿用紙の見た目や使い方ができるソフトが重宝されます。


 ですがソフトは使用する環境によって見え方が異なるのです。



 そこで注釈を入れられるPDF形式のファイルが重宝します。

 PDFファイルのよい点は、印刷所が印刷に用いる文字フォントを埋め込める点です。

 書き手側がPDFファイルを操作しても、印刷フォントが含まれているので、たとえ文字を直しても印刷所へ送れば即印刷可能となっています。


 PDFファイルは現在多くのソフトで閲覧と編集が可能です。

 ただし、注釈を共有するなどの使い方をする際には、一般的にAdobe『Acrobat DC』を使うことが多いですね。

 もちろん『Word』でも確認できるのですが、PDFに特化した『Acrobat』は昔から社内ツールとして利用されるほどの認知度を誇ります。


 こういったPDFファイルを編集、操作できる知識も書き手には求められるのです。



 まぁ受賞したら、担当編集さんから教えられるでしょうし、おそらく「やりとりの方法を詳しく書いた手引書」が送られてくると思います。


 ただ、インターネットの「小説賞・新人賞」を受賞する方がコンピュータ音痴だとは思っていないはずです。

 コンピュータ音痴が「小説投稿サイトの小説賞・新人賞に応募してくるとは思っていない」でしょう。


 だから、もしスマートフォンで執筆して投稿している方が受賞したら、賞金で「PC」「光回線」「プロバイダ」「Wi−Fiルーター」「プリンタ」は揃えさせられると思ってください。

 賞金100万円であればじゅうぶん足が出ますが、30万円程度であれば上記を揃えてきっちりくらいです。




 まぁ「捕らぬ狸の皮算用」と言います。


 受賞もしていないのに「紙の書籍」化の話をしてもしょうがありません。

 ただ、受賞したら「紙の書籍」化されますが、それ相応のPCスキルを要求されることは覚悟してください。


 『Word』を使うなら、ルビの振り方も憶えなければなりません。

 「自動カーニング」の機能停止の仕方も憶えておいたほうがよいでしょう。

 もしくは日本語ライティングに特化した『一太郎』の使い方を習熟するか。


 上記しましたが、「インターネットの小説投稿サイトで開催された小説賞・新人賞へ応募してきた書き手がコンピュータ音痴とは思っていない」ことは認識しておくとよいでしょう。




 まぁ私は「紙の書籍」化したわけではないので、あまり大きくは言えませんが。


 昔、書店の通信販売部門を統括する職にいましたので「カタログづくり」のノウハウならあります。

 そこでは『Word』で書いたものをMacのAdobe『Illustrator』『Photoshop』で配置して作成していました。

 そのいずれにも習熟している必要があったので、私は憶えましたけどね。


 現在ではMicrosoft『Windows』とApple『Mac』がほとんどですが、中には『Linux』を使う手練れも存在します。

 ですが現在はたいていの出版社で『Windows』『Mac』の両方に対応しています。

 『機種依存文字』にさえ注意していれば、とくに問題はないでしょう。




 ということで、「紙の書籍」化を目指せるところまでたどり着いたら、コンピュータ周りには強くなりましょう。

 もしわからないことがあったら、すぐに担当編集さんに相談してください。

 担当編集さんは百戦錬磨です。どんな初心者にもわかるよう日頃から説明力を磨いています。


 ただ、スマートフォン投稿をしている方は、賞金の使い途を「紙の書籍」化に必要なものを揃えるための支度金だと思ってください。

 けっして「欲しかったアクセサリーがあった」という使い途はしないように。

 便利な『Acrobat DC』も月額課金制です。

 『Word』で代用できなくはありませんが、けっこう手間がかかるのを覚悟しましょう。



 ここまで書いたことで理解できなかったものがございましたら、コメントを付けてくださいませ。

 できるだけ丁寧にお教え致しますよ。



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