第12話 冒険者ギルド
「ここが……冒険者ギルドかな?」
私は冒険者ギルドとおぼしき建物の入り口前にいた。
ハーピーはすでにアイテムボックス、つまりはこ丸の中だ。
滑空している時は良かったけど、まさか人の行き交う都の真ん中に魔物ごと舞い降りる訳にもいかないので、人のいない場所を狙って地面へと降りた。
その結果郊外の畑が集中している場所に立つことになり、道が分からなくなった私は人に道をたずねながらここまでたどり着いたという訳。……言ってて悲しくなってきたわ。気を取り直して入りましょう。
「お、お邪魔しまーす」
しかし私の挨拶に返事が返ってくる事はなかった。
「あ、想像してたのと随分違うのね」
冒険者ギルドというからには開けた途端喧騒が飛び込んでくるようなごちゃごちゃした場所をイメージしていたのだけど、整然としていて人も少ない。平日の昼間なのも影響しているのかも知れないわね。
扉を開けてすぐの通路をそのまま進むとひらけた場所になり、右側に受付のカウンターがあって、左側が待つためのイスとテーブルなどがある。
「レーアちゃーん。最近冷たすぎじゃなーい?」
「最近も何も最初からこうですけど?」
「またまたぁ! ホントは俺の事が気になってるくせにー!」
あ、見直してたのにやっぱり喧騒が聞こえてきた。人が少ないせいか悪目立ちしているけど当人は気にしてない様子。対応している女性の態度はそっけない。
現在受付はふたつあるみたいだけど、両方とも男性が利用してるみたいだから反対側のイスに座って待てばいいのかしら? ちなみに騒がしいのは手前側ね。
その反対側のイスには一人の女性が座っているのが見える。いや、座っているって表現は間違いだわ。佇んでいる。まさにそんな感じ。
「うっわー、すごい美人」
細身でスラリとした体型に、サラサラのブロンドの髪。着用している鎧も黄金色で、一緒になって目立っているが決して嫌味にはなっていない。脚を組みかえるその仕草なんかはまさに優雅の一言。
(ハコワン。いやリノ。いつまでもここに突っ立っているのは不審に思われるぞ?)
(わ、分かってるわよ)
「し、失礼しまーす」
はこ丸に促されて私は挨拶をしてその美人の横を通り過ぎ、空いているイスにちょこんと腰を降ろした。
当然ながら知り合いがいる訳でもなく、冒険者という訳でもないので居心地が悪くて落ち着かない。まぁ、これからその冒険者登録をするんだけどね。
「このギルド発足以来、最速でGランクからDランクになったこの『ハナキン=スカイウォーク』様の武勇伝をきけばレーアちゃんも間違いなく俺の虜だって。だから、どう?」
「辞退させていただきます」
あの男性は受付の女性にしつこくアプローチしているようだがまるで相手にされていない。受付の女性も美人だけど、彼を見る目はまさに氷の一言。しかしハナキンという人はそれを全然意に介していない。
隣にいるもう一人の受付の女性は大柄な男性の相手をしていた。その男性は全体が銀色で青色と黒のラインがアクセントの、なかなかおしゃれな鎧を着用している。無口っぽい男性は受付の女性の間延びしたしゃべり方に対して頷いたり首を振ったりして返答しているようだ。
「ねえ、そこのお嬢さん」
私がギルド内をそれとなく観察しているとなんと隣の『麗しの君』(勝手に命名)から声をかけられた! 私はギギギと音がしそうなほどぎこちない動きで顔をそちらに向ける。ああ! やっぱり私を見てるよ!
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