第6話 ナイトの正体

「いいねいいねぇ。それでこそ私が見込んだハコワンだ」

「今はそんな話をしてるんじゃ……」

「だ、そうだよ。ナイト?」


 ヨーダさんがナイトさんに話を振ったので私もそちらを見てしまう。ナイトさんも私をじっと見ている気がした。


「ナ、ナイトさんもそんな扱い嫌ですよね? 奴隷とかじゃないんですから......」


 無言の空気に耐えきれず思わず同意を求めてしまった私。話を振られたナイトさんは私に対して片膝をついた。それでも私の目線より少し高い位置にナイトさんの目線がある。


(ほう......)


 はこ丸の短い一言が聞こえた。


「ご心配には及びません。わが主。マスターハコワン様」


 ナイトさんが低い声でこう言う。主? マスターハコワンって......私の事!? 


「くっくっく。ナイトがハコワンを認めたねぇ。これは幸先いい予感がするよ。ハコワン、あんたのその考えは私も支持する。けどね、ナイトには私の言った方が都合がいいんだ。ナイト、ハコワンに顔を見せておやり」

「はい、ヨーダ様」


 言われたナイトさんが両手をフルフェイスの兜に伸ばす。なんだか胸がどきどきする。別に変な意味じゃないけど見ちゃっていいの? みたいな......え!?


「顔が......ない?」


 あ、これだとのっぺらぼうだと思われちゃうわね。言い直すわ。


(驚いてるわりには冷静だな)


 はこ丸から突っ込みが入ってるけど気にしない。


「く、首が......ない? え、えええ!? ......鎧の大きさが合ってないのかしら」

「驚いてるわりには冷静だねぇ」


 同じ突っ込みがヨーダさんから入った。


「ナイトに顔があるとすれば脱いだ......というか取った兜がそのまま顔になるのかねぇ。ナイトは同じ言い方をすれば身体もないよ」

「と、透明人間なんですか?」

「人間から離れておくれハコワン。ナイトはリビングアーマーって種族でね。ダンジョンなんかではさまよう鎧などとも呼ばれている魔物なんだよ」

「へ、へー」


「ちなみに鎧で首がない魔物と言えばデュラハンなんて存在もいてだね。この両者の違いは身体を保持したまま首と胴を切り離されたのがデュラハン。魂だけがダンジョン内に取り残された鎧に憑依して魔物となったのがリビングアーマーと言われているのさ」

「へ、へー?」

「さらには......」


 あれ? なんかヨーダさんの目が生き生きと輝いて饒舌になってる?


(始まってしまったか......)


 あれ? なんかはこ丸がうんざりしている? どうしよう、この展開についていけないよ。と思った瞬間、


「ヨーダ様、マスターが困っておりますので......」


 ナイトさんが話を遮ってくれた。


「んあっと。話が逸れたね。ナイトに関してははこ丸の中に居る方が活動に必要なエネルギーを得られるって事なんだよ。地上のような広い空間だと活動に必要なエネルギーが散らばり薄くなってしまっていたりしていてね。その場合契約者の魔力が消費されていく事もあるからそれを抑えるためにって意味もある」

「魔物は食事が必要ないって事ですか?」


(! おいハコワン!)


 はこ丸が驚いて叫ぶ。......やっちゃたのね、私。ヨーダさんの目の色が再び変わった。


「知りたいかい!? 魔物と言ってもその種類は多種多様でもちろん食事によりエネルギーを摂取する魔物も」

「ヨーダ様」

「あー......うん。そうだね。きりがないから話を進めよう」


 再びナイトさんが脱線しようとしたヨーダさんをとめてくれた。ごめんねナイトさん。ありがとう。


 でもヨーダさん、魔物の事になると目の色が変わるのね。好きなのかな?

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