夕べには海へ

葛野鹿乃子

旅先より

 ***予期しないエラーが見つかりました***


 ***プログラムを初期化しています***


 ***初期化用プログラムを解凍中***


 『エンリルの裁き』を実行しています。


 ***データを削除しています***

 ***データを削除しています***

 ***データを削除しています***

 ***データを削除しています***


 ****すべてのデータを削除しました***


 ***新しいファイルを作成しています***

 ***新しいファイルを作成しています***

 ***新しいファイルを作成しています***

 ***新しいファイルを作成しています***


 ***新しいデータを作成しました***


 ***新しいプログラムを実行しています***


 ***プラネタリウムを開始しています***


 『アシェラトの加護があらんことを』




     ***




 この手紙が貴方の元に届いているとき、きっとわたしは船の上でしょう。


 先日は貴方の指令通り、アンティラに行ってきました。あそこは相変わらず、どの魔法使いも閉鎖的というか、本当に何十年も変わらずにひたすら魔法の研究やら探求やらをしていました。

 貴方の名代だと言うと誰もが愛想よく接してくれます。おかげさまで頼まれていたものも揃えることができました。この手紙と一緒にお送りしますので、お確かめください。


 さて、肝心のアンティラの書庫の調査結果ですが。

 あの男の言っていたような記述は一切ありませんでした。書庫の管理人も知らないとなると、本当にあの男の言葉が信用できるのか怪しいものだと思いますが、信頼するかのご判断は貴方にお任せいたします。


 そもそも神話やおとぎ話の領域の話です。真実を確かめるための書物なんてまずないでしょうし、生き証人だってもちろんいません。裏は取れないと思います。この調子では、どこへ行っても証拠を探すのは難しいでしょう。一応、指令を受けた場所は巡ってみるつもりです。


 貴方の直々の命令なんてなかったら、今頃気ままな旅の浮草暮らしを楽しんでいただろうに、急な仕事の押しつけにはちゃんと報酬を払ってもらいますよ。

 何かあれば遠慮なくお申しつけください。

 それでは、次の調査が終わり次第またご報告の手紙をお送りいたします。


   貴方の友人にして忠実な部下より

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