第82話  グレムリンパワー

 銃身の長い拳銃をかまえると難波零子と名乗った金髪美女は引き金を引いた。

 パンっという乾いた音がして銃弾が発射された。

 銃弾は右肘の部分をのゾンビに的確に撃ち抜いた。

 ぐべっと血反吐を吐きながらゾンビは崩れた。

 

 巨人の右肘がぼとりと落ちる。


 腕を作っていたゾンビはただのゾンビに戻る。

 ウーウーと気味の悪い声をあげている。


 すかさず私はダッシュしてゾンビの頭を金属バッドで打ち砕く。

 ゾンビの頭から透明なクリスタルがあらわれた。

 あいつの左手にとりついた顔がよく食べていたものだ。

 私はそれを胸の谷間に入れた。


「見たかい、私のバンドラインスペシャルの力を」

 にこりと微笑んで零子さんは言った。

 落ちた右腕はゾンビ三匹でできていた。

 残りの二匹もやっつけなくては。

 私は頭上高く金属バッドを振り上げ、一気に振り下ろす。

 ゾンビの頭はぐちゃっと崩れた。

 スイカ割りみたいだ。

 空中に逃げていた美咲は残る一体の真上に飛び、投石する。

 頭上から勢いよく投げられた石によってゾンビの頭は破壊された。

「どうにかなりそうね」

 美咲は言った。


 ハーレーダビッドソンを降りた零子さんは私の隣に立った。

 背の高い人だ。

 たぶんだけど私よりも頭ひとつは高い。

 身長は恐らく175センチメートルはあるだろう。

 すらりとのびた手足はうらやましいほど長い。

 形のいい胸もとの上にあるファスナーに手をかけ、下におろす。

 胸の谷間から銀色の卵を取り出した。

 やはり胸の谷間にものを入れるのは便利だ。

 私は思った。

 零子さんはその銀の卵を額にあてた。

「グレムリンパワーフラッシュ!!」

 そう叫ぶと銀の卵は眩しく輝いた。

 目が痛いほどの光だ。

 光輝く卵にゾンビの頭からつきでたクリスタルが吸い込まれていく。

 二つのクリスタルを吸い込んだ卵はさらに光を増す。

 その光はやがて零子さんの長身を包んだ。

 一瞬ではあるが零子さんは素っ裸になった。

 ほれぼれするほどスタイルがいい。

 まあ、胸の大きさだけは負けないけどね。

 光が終息すると零子さんは西部劇にでてくるガンマンの姿になった。


 どういう原理でそうなったかは私の理解の外だった。


「ねえ、金属バッドの君、あの巨人をもう少し押さえといてくれるかな。私のモード銃士ガンナーであいつにとどめをさすわ」

 そう言い、零子さんは私にウインクする。

 悔しいぐらいに絵になるな。

「わかったわ。やってみる」

 私は答えた。

 できるかどうかわからないが、やるしかない。


 私はさらに仕立て屋兎の懐中時計に力をこめた。

 時のいましめからどうにかして逃げ出そうとしていた巨人の動きが再び停止する。

 どうにか止めることができたが、私の体力が目に見えて減っていく。

 ぜえぜえと肩で息をし、汗が額から流れ落ちる。

 どうやらこの能力を使うと体力を著しく使うようだ。

 疲労が目に見えて私の体を襲うがここで手をぬくわけにはいかない。


「すぐにかたをつけるから頑張ってね」

 零子さんはそういうと駆け出した。

 地面を蹴り、空高くジャンプする。

 巨人の頭の上に飛び乗るとバンドラインスペシャルと呼んだ拳銃の銃口を巨人の額に向けた。

「さあ、ワイアット・アープの力見せてあげるわ」

 そう叫ぶと続けざまに拳銃の引き金を引いた。

 五発の弾丸が巨人の頭を貫く。

 零子さんは一度リロードし、さらに六発の弾丸を撃ち込んだ。

 そのすべてが巨人の頭を突き抜けていく。

 汚れた血や肉片を撒き散らしながら、巨人は地面に沈んだ。

 そして零子さんは華麗に着地した。

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