第83話 熱心党のシモン
駄目だ、もう限界。
私の体は悲鳴をあげていた。
すでに熱くなっている懐中時計を握る指の力が抜けていく。
ゾンビの巨人をしばりつけていた時のいましめが解き放たれようとしている。
だが、すでに零子さんの攻撃で巨人は巨人であることができなくなっているようだ。
バラバラのゾンビがそろぞれ絡み合い、うごめいていた。
こうなれば簡単だ。
一体一体を各個撃はするだけだ。
「ほうこれはすごいの。空中分子変換装置か。徴税人のマタイ、ラスプーチンの生臭坊主め、いきなものをつくるわい」
突如、老人のしわがれた声が聞こえた。
いままでそんな気配はなかったのにその老人は私の胸の真横にいた。
小さな老人だった。
およそ身長は百二十センチメートルほどだろう。
頭はつるつるで汚れたローブを身にまとっている。
口にドジョウ髭を生やし、顔の皮膚はしみだらけだった。
その老人はしわくちゃの枯れ木のような手をのばして私の胸をむんずとつかんだ。
指がずぶずぶと乳房の肉に沈んでいく。
「ひゃああ」
思わず私は声をもらした。
こんな不気味で気持ちの悪い老人に胸を鷲掴みにされて快感を覚えてしまっている。
股間の辺りがじわじわとにじんでくる。
もう嫌、こんな体。
ゾンビにはなりたくはなかったが、サキュバスもどうかしている。
あいつのならまだいいが、こんな見ず知らずの老人は嫌すぎる。
「あんっあんっ」
そうはおもうが体が勝手に反応する。
老人の手に感じてしまっている。
もうやだよ……。
「ほうほうこれはたわわによう実っておるわ。これぞ神がつくりだした賜物というやつじゃ」
ひゃひゃひゃと老人は笑う。
「どうじゃ気持ちいいか、サキュバスよ」
執拗に老人は胸をもみ続ける。
「ひ、ひもちひょくなんてないもん」
本当はいってしまいそうなほど気持ちよかったがそれは認めたくなった。
「ひゃ、ひゃんた誰よ」
私は涙目で言った。
「サキュバスよ。教えてやろう。わしは熱心党のシモン、十二使徒の一人じゃ。またの名をロジャー・ベーコン」
そう老人は言った。
なにそれ、ベーコンってちょっと美味しそうな名前じゃない。
ロジャー・ベーコンと名乗った老人はしわくちゃの手で私の胸をあきずにもみ続ける。
こんな気味の悪い老人にもまれているだけで私の体は否応なく反応して、はあはあと勝手に声をもらす。
調子にのってロジャー・ベーコンは乳首をつかみだした
指先でひねるようにつまむ。
「ひ、ひくっ……」
う、気持ちいい。
思わず言ってしまった。
「さすがはサキュバスじゃわい。感度は敏感じゃのう」
うう、もう嫌だ。
こんなことされたくないの体は勝手に反応して、勝手に気持ちよくなっていく。
同じもまれるのならあいつにしてもらうほうが百倍もいいのに決まっているのに。
「出たな!!妙な生き物!!」
零子さんは私の方を見て、叫んだ。
素早くバンドラインスペシャルをかまえると躊躇なく引き金を引いた。
銃弾は的確に老人の額を撃ち抜く。
ロジャー・ベーコンは真後ろに吹き飛び、額から噴水のように血を吹き出した。
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