第59話 壁の頂上
僕たちはかなり上空まで飛翔した。
ついに眼下に嘆きの壁の頂上に到達した。
ゆっくりとQはコウモリの羽をはばたかせ、着地を試みた。
僕たちはその頂上への着地する。
着地した僕たちはその空気が冷たくなっているのを肌で感じた。
吐く息が白くなっている。
それにかなり息苦しい。
酸素がかなり薄くなっている。
僕はためしに下を見たが、まったく地面を見ることができなかった。
思わずひええっと言ってしまった。
「うわっ寒い」
Qはそう言うと両手で自分の腕をさすった。
震えているQの肩に僕は母さんからもらったミスリルのコートをかけた。
「ありがとう」
Qはにこりと微笑んだ。
嘆きの壁の頂上は幅は約十メートルほどだろう。
なんの素材でできているのかはわからないが、つるつるとした地面は病院などの床を想像させた。
Qは壁の向こう、封鎖された外側をのぞこうとしたが、その時、耳がいたくなるほどの警報が鳴り響いた。
侵入者発見!!
侵入者発見!!
侵入者発見!!
機械の音声が周囲に鳴り響くと、あっという間に特殊部隊の装備を着た人間があらわれ、僕たちを前後左右から取り囲んだ。
映画や海外ドラマでしか見たことのない装備を着た人間たちがアサルトライフルの銃口を一斉にむける。
彼らはヘルメットにゴーグル、口元をガスマスクのようなものでかこっており、性別や顔形はわからなかった。
皆が同じような装備、服装でアンドロイドのように一糸乱れぬ統一された動きであった。
「か、囲まれちゃったよ」
Qが僕の腕をつかむ。
僕は斬鉄剣の柄に手をかける。
「侵入者発見!!これより目標を排除する」
その特殊部隊の隊員の一人が言った。
右手を上げ、それを振り下ろす。
その動きに合わせて、僕たちを包囲していたアサルトライフルの銃口から一斉に火が吹いた。
くそ、問答無用かよ。
「きゃあ!!」
突然の出来事にQは悲鳴を上げた。
僕は眼と両腕、両足を三日月で最大まで強化した。
基礎体力がレベルアップしている僕の体はさらに強化される。
心臓が強く鼓動した。
どうやら強化への反動のようだ。
体にそれなりに負担があるようだ。
強化された僕の動体視力にはせまりくる弾丸がゆっくりと飛来するのが視認された。
斬鉄剣流星を細かくふり、弾丸を叩き落としていく。
何百もの弾丸が僕たちを包むように襲ってきたが、僕はそのすべてを叩き落とした。
肺と心臓がかなり痛むが、今はそんなことにかまってはいられない。
一つでも取り逃せば、弾丸はQの柔らかな体を突き抜けてしまう。
そんなことはさせない。
Qは大切な仲魔だ。
ぱらぱらと乾いた音をたて、金属の弾丸は地面にぶちまけられた。
辺りは火薬の焦げ臭さに包まれた。
「第二射いくぞ!!」
特殊部隊の人間の一人がそう言い、また引き金に手をかける。
彼らの声を聞いた後、僕の視界に浮かぶアイコンの列が勝手に動き出した。
カタカタと動いていく。
満月がデザインされたアイコンが勝手にクリックされた。
どうなっているんだ。
疑問が浮かぶ。
望月が発動しいているわ。
この能力は
七つのギフトが具現化されてあらわれるわ。
月読姫が言った。
僕の目の前に複雑な魔法陣が浮かぶ。
その魔法陣が光輝き、何者かが出現した。
それは白い毛の狼だった。
青い瞳でこちらを見ている。
「我は新月に宿りし嫉妬のレヴィアタン。火星の化身なり。夜空月彦を守護する者なり」
狼は低い、人間の男の声で言った。
な、なんだこいつは。
味方なのか。
「我は汝らの守護者である」
その白狼はそう言った。
「な、何。この狼さん、助けてくれるの」
Qは嬉しそうに言った。
もし援軍なら心強い。
見た限り、かなりの戦闘力がありそうだ。
獣が銃に対抗できればだが。
白狼はにやりと口の端をあげ、白い歯を見せると特殊部隊の隊員の一人に飛びかかった。
その隊員の右腕に噛みつくと、一息で咬みちぎった。
アサルトライフルを持つ腕ごと地面に落ちた。
奇怪なことにその腕の断面は機械でできており、バチバチと配線から火花が散っていた。
なんだ、こいつらはやはり機械人間なのか。
その様子を見た特殊部隊隊員が銃弾を発射させた。
また先程のようにアサルトライフルの細長い弾丸が無数に僕たちを襲う。
僕はポケットからビー玉を取りだし、空中に放り投げた。
三日月でビー玉を強化加速させ、銃弾を迎撃する。
残る弾丸も斬鉄剣で切り刻む。
白狼レヴィアタンは地面をけると特殊部隊隊員の首に噛みついた。
その鋭い牙で首を食いちぎり、地面に吐き捨てた。
続けて別の隊員にその右足の爪で切り裂いていく。
胴に風穴をあけられたその機械人間は火花を撒き散らし、後ろに倒れた。
またすべての弾丸を打ち落とせた。
しかし、体が苦しい。
弾丸に追いつくのに肉体を強化した反動がすさまじい。
僕は肩で息をしている。
機械人間を倒した白狼レヴィアタンが僕の横に飛び下がる。
体は苦しいがこの戦いも負ける訳にはいかない。
こいつらはこの世界をこんな風にした奴らの部下にまちがいない。
何かききだせるのなら、聞き出さなくてはいけない。
「待ちたまえ」
低い、がさついた男の声が特殊部隊隊員たちの攻撃をとめた。
その声の方を見ると神父の衣服を着た筋骨隆々の男が立っていた。
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