第52話 封じられた神
若干頭が痛んだが、それはすぐにおさまった。
僕は軽く頭をふった。
「おい、月彦、大丈夫か?」
父さんが聞いた。
「うん、大丈夫だよ、父さん」
僕は答えた。
「黙示録の四騎士っての倒したし、どうだい、ご神体を拝みにいかないか」
子供のような笑顔で父さんは言った。
「そうね、あの天使がどうしてこの場所を守っていたのか。それが本殿の中に隠してあるかもしれないわね」
母さんは言った。
僕は両親の言うとおり、本殿に進むことにした。
その社は古く、歴史を感じさせたが、それほど珍しいものとは思えなかった。
木製の扉を開け、僕たちは本殿に入る。
その奥には一振の剣が鎮座していた。
その剣は寒気がするほどの美しさであった。
神々しいとはこのことだ。
銀色に輝く刃が美しい。
両刃の剣で日本刀が造られる前の形であろうと思われた。
その刃は美しいが剣自体は随分古いものに思われた。
「おいおいマジかよ。こいつが本物だとしたら国宝級のもんだぜ」
珍しく、父さんが慌てていた。
「そんなに珍しいものなの」
僕は訊いた。
「こいつが本物なら草薙の剣だ」
頬に浮かぶ汗をそのままに父さんは言った。
「それってあの神話の……」
さすがにその名前は聞いたことがある。
「この神社に奉られているのはスサノオノミコトだからもしかすると本物かもね」
母さんが期待まじりに言った。
「それ、私しってるよ。ヤマタノオロチを倒したときに出てきた剣でしょう」
Qが言った。
「そう、嬢ちゃん、正解だよ」
にこりと父さんは言った。
「それじゃあ、ちょっと失礼して」
父さんは草薙の剣に近づき、手を触れようとする。
だが、バチンと激しい音がして父さんの手は弾かれた。
かなり強い電気のようなものが発生していた。
その光が剣を守るようにまとわりついている。
「ちっ怒らしまったかな。魔属性の俺じゃあ触らせてもらえないか」
悔しそうに父さんは言った。
父さんの言っている意味はよくわからなかったが、導かれるように僕はその剣の柄に触れた。
触れた直後、何かの映像が頭の中によみがえった。
「ちょっとあんた大丈夫?」
遠くにQの声が聞こえる。
「おい、月彦、月彦」
父さんが僕の名前を呼ぶ。
「しっかりして月彦」
また母さんが僕を抱き抱える。
やはり母さんの腕は暖かくて落ち着くな。
僕の意識は遠退き、その流れこんでくる映像の世界に旅たった。
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