第26話 リリスの因子

 力強く僕の頭を押さえると夢野久美は気持ち良さそうに何度も喘いだ。

 しかし、彼女はどうしてこんなに気持ち良さそうにしているのだろう。


 それはね、賢者の石にはある種の快楽物質が入っているの。

 これをつくった人物がそのように設計したようなのよね。

 天野陽美博士が残したわずかなでデータに記録されているの。

 たしか人類の進化を促進するためにそのように設計デザインしたようなのよね。


 その説明はわかったようなわからない説明だった。

 ただ、どうやら僕の体液には快楽物質なるものが混じるということなのだろう。


 僕は無心でその傷口を舐める。

 舐めていくほどに紫色に醜くただれていあた傷口はふさがり、うっすらとピンク色の瑞々しい肌を取り戻していった。


 これが月桂樹の能力か。

 ゾンビ化を防ぐ能力か。

 これはこのゾンビが徘徊する世界でのかなりの希望になるかもしれない。


 そうね、でもあまり多用はできないわ。

 この月桂樹の力はかなり限定的なの。

 まず、アンデッド化が完全でないこと。

 もう一つあってね、それが一番重要なんだけどね。

 それはイヴの末裔ではないこと。

 人間はアダムとイヴの末裔だといわれているけど、実はねそれ以外の血統を持つものがいるのよ。

 見た目は普通の人間とかわらないけどね。

 そして運良くこの牛乳娘はリリスの因子をもっているようね。


 月読姫はそう説明した。


 その話は僕一人には手に余るものだった。

 なんだろう、そのリリスの因子ってのは。

 たしか父さんから聞いた昔話にその名前の人物がいたような気がするな。

 もし父さんが生きていれば詳しく聞きたい。

 そのリリスという名前には聞き覚えがあっったが、今は夢野久美を助けることを優先させよう。


 ある程度舐めると傷口は完全に塞がった。


 軽く撫でるともうそこは、その元傷口だった部分は完全に元通りになっていた。

「はあっはあっはあっ」

 熱い吐息を夢野久美はもらしていた。

 涙を浮かべながら、僕の顔を見ていた。


 さあ、仕上げましょう。

 もっと体液を流し込んで、牛乳娘の遺伝情報を書き換えるのよ。

 この牛乳娘の因子に起因する種族に固定するのよ。

 そうすれば牛乳娘は自我を保つことができるわ。

 その後、奴隷契約をして完全に支配するの。

 奴隷契約をしないと自我がその後崩壊して、欲望のままに動く怪物クリーチャーになるから、気をつけてね。

 月読姫はそう説明した。

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