第15話 立てこもる人々

 僕たちは一度コンビニに戻り、少し休憩をとった後、夢野久美の仲間たちが立てこもる小学校へと向かうことにした。

 小学校までの道のりは二体ほどのゾンビに遭遇したが、三日月の能力で簡単に粉砕できた。

 夢野久美を守りながらの戦いであったがこの七つのギフトの能力があれば、どうにかできそうだ。

 その際もクリスタルの回収を忘れない。

 だが、どうしてこんなものが頭の中にできるのだろうか。

 それは疑問であったが答えはむろんみつけることはできない。


 二十分ほど歩き、その小学校にたどり着いた。

 

 一体のゾンビが地面を這っていた。

 ゾンビの少女だった。

 穴だらけのスカートをはいていて、両足が無かった。

 それを見つけた僕はそのゾンビに木刀の切っ先をむける。

 その僕の行動を抱きついて夢野久美は止めた。

 巨乳が背中にあたり、柔らかかった。

「お願いだから、その子はほっといてあげて……」 

 懇願するように夢野久美は言った。

「どうしてさ」

 僕は訊く。

「その子は私の友達だった子なの。もう抵抗する力は残ってないわ」

 たしかに彼女の言う通り、このゾンビの少女はウーウーと地面は這いつくばることしかできないようだった。

「わかったよ」

 ゾンビになったとはいえ、こんな足のなくなった少女を殺すのは可愛そうだ。

 ゾンビだから一度しんでいるとはいえだ。

「ありがとう。ごめんね、実花ちゃん……」

 夢野久美はそう言うと顔を伏せた。

 その目には涙が浮かんでいた。

 どうやらこの足のないゾンビの少女は知り合いのあわれな末路のようだ。


 そうね、私たちの目的は天野陽美博士を見つけ出すことであって、ゾンビすべてを倒すことではないからね。

 月読姫も賛同してくれた。


 夢野久美の手をつかむと僕たちは小学校の中に入った。

 念のためグラウンドを横切る際、新月の能力をつかったが、そんなのは無用な心配だった。

 校庭にいたのは実花ちゃんと呼ばれた少女のゾンビだけだった。

 

 能力を解いた僕たちを出迎えたのは一人の男性と二人の女性だった。

 この人たちが夢野久美の参加しているグループのようだ。

 筋骨たくましい男は田沼と名乗り、僕と握手した。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る