第8話 生き残りが語るには
ボリュームたっぷりの巨乳に手をあて、その
呼吸する度にゆれる巨乳に僕の視線は釘ずけだった。
「生きている人で良かった」
涙目で彼女は言った。
「ああ、僕は生きている人間だよ。僕の名前は
と僕は訊いた。
「私は
そういうと茶髪で巨乳のその娘は僕に手を差し出した。
僕はその手を握った。
思ったよりすべすべとした触り心地のいい手だった。
夢野久美は僕の手を握ると立ち上がった。
どこか痛むのだろうか、その可愛らしい顔を歪めていた。
彼女の足元を見るとそこにはチャックの開いたボストンバックが置かれていた。
バックには缶詰やレトルト食品、ビスケットなどのお菓子、飲料水が目一杯詰められいた。
どうやら彼女も食料品を調達しにきたようだ。
「あんた、あの事故からどうしてたの?」
ボストンバックに食料品を詰めながら夢野久美は訊いた。
「事故ってなに?」
事故ってなんだ。僕が眠っている間におこったことだろうか。
いったいこの街に何があったんだ。
「実はね、ずっと意識を失ってたんだ。気がついたらこのありさまでさ」
僕は正直に言った。
ここで嘘をついてもしかたがないだろう。
信じてもらえるかはわからないが。
「そうなの……」
じっと夢野久美は僕の顔を見つめる。
その顔だちはかなり派手なものだった。大きいくりくりの瞳に小さい丸い鼻、厚めの唇。けっこう可愛いな。でも、陽美にはおよばないけどね。
「どうやら、嘘をついいてないみたいね。それにしても二週間もねてたなんて、あんた寝過ぎじゃない」
くくっと夢野久美は微笑んだ。
おっその笑顔もなかなか可愛いな。
ちょっとタイプかも。
まあ、一番は陽美だけどね。
「二週間前に何があったんだい?」
僕は訊いた。
「本当に何も知らないんだ。あんた本当にラッキーだよ。あのくそったれのゾンビたちに二週間も襲われずにすんだんだからね」
そう良い、夢野久美は棚からミネラルウオーターを取り出すとごくごくとうまそうに飲んだ。
「二週間前ね、湾岸地区の化学工場で爆発事故があったんだ。そこからもれた化学物質が原因で人がいっぱい死んだんだ。その死んだ人たちが何故かゾンビになって街中の人たちに襲いかかったんだ。ゾンビに噛まれたり、引っ掻かれた人たちもゾンビになってしまったんだよ。あとはねずみ算式に倍々ゲームで街中はあっという間にゾンビだらけさ」
夢野久美はそう説明した。
化学物質がもれて、ゾンビがあふれだした。
にわかには信じられない話だ。
こういうのはゾンビ映画や海外ドラマなんかでは必ず裏がある。
陰謀論的なね。
よくあるのが世界的な製薬メーカーが背後で暗躍してるとかだけど、証拠が少なすぎて結論はだせない。
陽美はこうなることを予想していたみたいだけど、それも彼女を探しださないと答えはみつからない。
「本当なのかな……」
僕は言った。
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