第6話 出発準備
ザザザッ。
ザザザッ。
ザザザッ。
これはまたあのノイズだ。
ノイズが頭の中で行進曲を奏でている。
陽美の匂いに包まれて眠っていると何度か、例のノイズが頭の中に鳴り響いた。
目を覚ました僕はリビングに行き、朝食をとることにした。
カセットコンロでお湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れる。
陽美のお母さんが備蓄していてくれていた長期保存のきくパンを食べた。
普段なんとも思わなかったが、このような事態になったことを考えると陽美のお母さんがきっちりと準備をしていてくれたことに感謝の気持ちがあふれる。
これが失って初めてわかるというやつか。
あの可愛らしい陽美と美人で優しいお母さんにまた会いたいものだ。
そして陽美のお父さん。
僕自身はそれほど会話したことはないのだが、僕の父親の親友なのだ。
海外での仕事が多い陽美のお父さんの印象といえば難しい顔でパソコンにむかっている姿であった。
口癖のように「このままではいけない」というのを言っていたのを覚えている。
あれは一体どういう意味だったのだろうか。
もし、僕の父さんと母さんが生きていたのならその意味をきいてみたいと思う。
ほんとうに両親たちが生きていてほしい。
僕は街に向かうために準備をすることにした。
このまま陽美の家にいても事態はなにも進展しない。
やはり外にでて、情報を集めなくてはいけない。
そして両親たちの安否を確認しなくてはいけない。
災害用のリュックに非常食のパンとミネラルウオーターを二本、それに消毒薬、鎮痛剤、絆創膏、包帯などをつめこんだ。
護身用に陽美がコスプレで使っていた木刀を持つことにした。
アニメが好きな陽美はよく宅コスをしていた。
アイドル顔負けの可愛らしい陽美のコスプレはアニメキャラがそのままテレビから抜け出てきたのではないかというほどのクオリティであった。
よく写真をとったものだ。
またあの日常は訪れるのだろうか。
木刀を軽く降るとビュウッという風切り音が耳に心地良かった。
玄関を開け、外に出た。
さて、ここから何が起きるか皆目検討がつかない。
陽美を探しだすのにも何も手がかりがない。
暗闇の中を手探りで進む旅が始まった。
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