第4話 初めのギフト月読
思わず僕はその腐った女性の顔を見て、息を飲み込んだ。
悲鳴をあげなかったのは我ながら良くできたものだと思った。
その腐った女性は僕をみつけると両手をあげ、こちらに歩きだした。
だんだんとスピードをあげ、こちらにやってくる。
駆け足に近い。
足をひきずりながらではあるが、かなりの速さだった。
恐怖と気味の悪さで腰をぬかしそうになったが、どうにかもちこたえた。
これはまずい。
逃げなくては……。
だが、恐怖で足がうまく動かない。
恐らく、その女性は純粋な食欲に基づいて僕を襲おうとしているのだ。
その証拠に顎をはずしながら、こちらに向かってくる。
ザザザッ。
ザザザッ。
ザザザッ。
またあのノイズが頭の中に鳴り響いた。
こんな時になんだっていうんだ。
僕が正直、困惑していると、そのノイズは人の声に変化した。
落ち着いて、月彦。
君に付与されたギフトを使えばあんな低級アンデッドなんてどうということないわ。
その声はどことなく
それはそうよ、私は天野陽美博士の人格データをもとにつくられたのだからね。
私の名前は
月彦、あなたに付与された
今は説明している暇はないわね。
とりあえずこの場面をきりぬけないとね。
まずは君の視界の左下に浮かぶアイコンを認識してみて。
僕はその頭の中で語りかける声にしたがい、自分の視界の左下を見た。
うっすらと黄色い円が浮かんでいる。
それに意識を集中させた。
カチッという音がする。
マウスのクリック音に似ている。
二つ目のギフト新月を発動させたわ。
能力は主に認識阻害。
簡単にいうと気配を消す能力ね。
他にも色々できるようになるけどまずはこの力を使って切り抜けましょう。
動かないでね。
もうあのゾンビは月彦に気づかないわ。
女ゾンビは急にきょろきょろしだした。
どうやら僕をさがしているようだ。
目の前に僕がいるのにどうやら僕を見失っているようだ。
本当に月読姫の言う通り、そのゾンビは僕という存在を認識できなくなっているようだ。
またウーウーと不気味な声を発しながら、どこかに歩き去ってしまった。
これが彼女の言う新月の能力なのか。
誰にも気づかれない能力ということか。
遠くに過ぎ去っていくゾンビの女性を見ながら、僕は考えた。
とりあえず、ほっとした。
僕は安堵した。
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