第3話目覚めたらそこはゾンビ世界

 そこは真っ暗な部屋だった。

 ゆっくりと目をならしながら、周囲を見渡すとそこは陽美の部屋だった。

 だが、肝心の陽美はいない。


「陽美、どこだ?」

 僕はまるで気配のない部屋で一人、声をだして訊いた。

 当然のように返事はない。


 本棚に置かれているデジタル時計をみると二十二時をまわっていた。


 あれ、おかしいぞ。


 違和感を覚えた僕は置時計の日時をもう一度確認した。

 日付がすでに二週間過ぎていた。


 おいおい嘘だろう。


 僕はこの部屋で二週間も寝ていたのか。


 いや、きっとこの時計が壊れているのだろう。

 そう信じたい。


 愛用のリュックからスマホを取り出すと、当然のようにバッテリーが切れていた。


 くそ、どうなっているんだ。

 僕は毒ついた。


 部屋の電源をいれるが、カチカチと乾いた音がなるだけで蛍光灯に光はともらない。 


 僕はてさぐりで部屋をでた。


 階段を降り、リビングにむかう。

 しかしそこにはあの優しくて美人の陽美のお母さんはいない。


 玄関に向かい、スニーカーをはく。

 いったい陽美たちはどこにいってしまったのだ。

 皆目見当がつかない。



 家の外も真っ暗だった。

 本来、このあたりは郊外の住宅街で街灯が多く存在し、けっこう夜でも明るかったはずだ。

 今はそれが一つも点いていない。

 だが暗闇でずっと行動していたのでだんだんと夜目がきくようになっていた。

 油断すればこけそうになるので慎重にあるかなければいけない。


 とりあえず、駅までいこう。

 陽美の家に誰もいないのは仕方がない。

 一度自宅にもどろうとお思った。


 もしかして大規模な停電でもおこっているのだろうか。

 だとしたら駅までいってもしかたがないかもしれないが、まあここにこのままいるよりはいいだろう。

 避難してきた誰かにあえるかもしれない。



 しばらく歩くと僕は一人の女性にであった。

 やった、人に会えたぞ。

 その女性はゆっくりと歩いている。

 あれっ様子がおかしいぞ。

 右足をひきずっている。

 その足首がぐにっと内側に捻られている。

 ずるずると足をひきずっている。

 その女性は僕のことに気ずいたのかくるりと振り向いた。


 その女性の顔を見て、一瞬で吐き気を覚えた。


 青黒い顔は半分腐り落ち、髪はどろどろに抜け落ち、唇と鼻はくずれ、皮膚の赤い内側がむき出しになっていた。

 ウーウーとその女性は奇妙な唸り声をあげていた。


 ああ、そうだ。

 これは間違いない。

 映画や海外ドラマでよく見たことがある。


 それはゾンビだ。



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