第5話
腹が減っていたのも今では満腹になっていた。
本題へと入る前に、この彼女――ライアについてちょっと説明をしようと思う。
ライアは、元々は王としてこの世界を収めていた。
ライアが言うには――「あたしとしては、もっといい雰囲気の国にしたかった。でも、訳あってそうはならなかったんだ。でもでも、少しくらいはは良い感じでしょ?」
などと言っていた。
たしかに、この世界は良い雰囲気を持っているよ。
例えば、すれ違うたびに挨拶などをしてくれたりと。
まあ、現実世界とはあまり変わらない気がするけど。
見た目は長い銀髪、大きな瞳などとものすごくかわいく、性格はちょっとおっとりした感じ。
一目見ただけでは、この子が王なの?と疑いたくなるように、何度も言うがかわいいんだよこの王は。
なんか、言ったことに対しては何でもやってくれそうな......そんな感じ。
いや別にやましい事なんか考えてないし!
と、一人で思っていると。
「ねぇー、聞いてる?」
と、ものすごくおっとりしたような声でそう言ってくるライア。
「え、ああごめん。何の話だった?」
「だーかーら、この後どうするのかってこと」
「うーん......」
一人で何を考えているかと言うと、このあのことについて。
今日この世界に来たばかりなので、この世界の事はもちろん知らないし、そもそも家が無い。
そうなってくると......答えは一つ。
「あのさ......今日だけでいいから、君の家に泊めてくれないかな?」
俺はちょっと恐る恐るそう言った。
恐る恐るなのは、相手が元王だから。
なにか言って、機嫌を悪くしたら殺されるかもしれない。
そんな行き過ぎたことを考えていると、考えていることとは逆におっとりとした声で、
「うんっ、いいよ~。というか、今日だけじゃもったいないでしょ?毎日泊まってもいいよ?」
まさかの、今日だけではなく毎日泊まれる権利を与えられてしまった。
「え、いや、毎日泊まることについては考えとくけど......」
逆に俺が遠慮をしてしまう。
「それじゃっ行こうか~」
「お、おう!」
ちょっと距離は近いものの、俺はライアと一緒にライアの家に行くことにした。
「はいついたよ~」
「うおっ......なんか、異様にでかいな」
想像していた大きさよりも随分と大きい家が一つ。
「ま、まさかだとは思うけど......ここに一人で住んでるの?」
「ううん、一応家には女の子二人はいるよ~」
女の子二人いるって......というか、その人数にしてもこの家がでかいことが分かった。
「まあまあ、とりあえず入りなよ」
「あ、うん。おじゃまします」
ライアの家に入ると、外見と同じく中もすごく広かった。
なんというか、豪邸みたい。
「うーんと、こっちがリビングで、こっちが――」
ライアは、一つ一つ部屋を丁寧に教えてくれる。
「――で、ここが君の部屋だよ~」
二階に上がり、一つ空き部屋があり、そこが俺の部屋らしい。
なんというか、空き部屋と言うもののめゃくちゃ綺麗だ。
恐らく、誰かが定期的に掃除をしているのだろう。
「じゃあ、今日はよろしくお願いします」
「うん、よろしく~」
軽い挨拶を交わし、俺はその部屋へ入って行った。
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