第4話

「はい、おまちど~」

注文をしてから十五分ほどが経ったとき。

明るい声と共にドアが開き、さっきの人が料理を持って入ってきた。

「えっと、これはモンスターの肉を使った骨付き肉だよ~」

たしかに骨付きの肉だ。

現実世界でいう所の、どっかの麦わら帽子の男が骨付き肉を食べてた気がする。

あれ違うか?......まあいい。

そんな骨付き肉と、普通と言えばそうだがご飯が付いていた。

「モンスター?なんの?」

「うーんと、リットっていうモンスターだよ」

「リット?」

俺はおうむ返しのように聞き返す。

「リットていうのは、簡単に言えば小さい動物の事。例えば、リスとか。そんな感じ」

なるほど......異世界だからモンスター要素はあるのか。

「ああそうだ。君の名前は?」

「えっ?あたしの名前?」

その人はちょっと首をかしげて俺を見る。

「あたしの名前は――だよ」

「..................?!」

俺は一瞬目を見開いた。

「ら、ライア?!ライアってあの最強の――」

「あ、あぁぁ!!ちょ、ちょっと声が大きいってば!」

「......ご、ごめん。というか、君が本当に王?」

俺は少し落ち着きを取り戻し、今度は少し小さな声で聞いてみた。

「う、うん......王っていうか、元の王だけどね」

ま、まさかこのかわいい子が王だったなんて......しかも、ライアだったなんて。

俺は少しこんがらがっていた。

「え、ええと、君はたしかっていう風に言われてるけど......」

俺は聞きたいことをライアにぶつけてみた。

「あ、ああ......表向きにはそう言う風に言われてるけど、実際は死んでないよ」

「え?でもなぜ、ライアは死んだっていう事になってるの?」

「うん。簡単に言えば、王の仕事を辞めたいと思ったんだ」

王って仕事だったのかよ......。

「それで、辞めたいと思っても辞めれなくてさ......だから、一時的に死んだと思わせる魔法で死んだんだ」

そうか、たしかライアはどんな魔法でも使えるとかって言ってたよな。

「それで、表向きでは死んだという風に言われてるって訳」

「へぇ......ん?ちょっと引っ掛かるんだけど、なんで俺に君の名前を教えたんだ?」

表向きでは死んだと言われていれば、誰かに自分の名前を知られないようにする必要がある。

それなのに、なぜ彼女は俺に名前を言ったのだろうか。

「その、君になら言ってもいいかなって思って。理由は、ここの世界の人じゃないから。だってここの言葉が読めないってことは、絶対この世界以外から来たってことでしょ?だから、言ったとしても秘密にしてくれそうだったから......」

ああ、だから俺に名前を言ったのか。

普通であれば、「君の名前は?」と言われた場合「あたしはライア」と言ってしまったら非常に大変である。

だって死んだって言われてるライアが生きてたなんて言われたらすごいとになるだろう。

だから、自動的に仮名を使わざるおえないことになる。

「なるほどねぇ......君に聞きたいことがいっぱいあるんだけど、良かったらいい?」

俺は、すっかり忘れていた骨付き肉を食べながらそう言う。

「あ、うんいいよ~。それだったら、この店が終わったらゆっくり聞いてあげる」

「うん、ありがと」

俺は、ライアにききたいことを少し整理しながら骨付き肉を食べ進めていた。







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