第14話 問⑤二尋視点【この服を着ろと?】

「お! それな! 何がいいかなぁ」


深山が足を地面に卸すと、ゲーム画面を閉じて、ネット検索を始めた。


「身体的屈辱のある選択って何がある? ピンヒールで踏まれたい体の場所の選択、これはユキさんに嫌がられそうだ。でも、ろうそくと目隠し・縄ならオッケーかな?」

「オ前、ユキ ニ 何ヲ サセル気ダ?」

「上半身裸で歩くか下半身裸で歩くか、これは警察に捕まりそうだし」

「フタヒロ ハ 社会的 ニハ 関川二尋ダ。僕ノ名誉 ヲ 傷ツケルコト ハ ヤメテクレ!」

「メイド服とか?」

「男ガソンナモノ着テドウスル!!」

「愛の伝道師の館に連れて行くのもありだな」

「ヤ、ヤメテクレ!!」


 あやしい単語を検索している深山に僕は焦った。僕も慌てて、検索を始める。『身体的屈辱のある選択』なんて言葉を言わなければよかったとひどく後悔した。





「深山、コレデ ドウダ?」

「あん?」


 僕は画面に検索して引っかかったWEB小説の一節を画面に映し出した。


【この服を着ろと?】

目の前で、愛しいエレンが微笑んでいる。こんなに幸せなことはない。

ここのところ、お互いに忙しくて、なかなか二人の時間を持てなかったのだ。

やっとできた、二人だけの時間。

キミが満面の笑みでボクを見つめてくれる。

キミのためなら、なんだってしてあげたい。

心から、そう思える。


――と、ついさっきまでは思っていたんだけど――


すまない!

やっぱりムリだよ、コレ。

「似合う! 似合うよ、エドワード!!」


 キミが絶対に似合うと言いながらボクに着せた服。

 鏡の前で、言われるがままにポーズをとってみるボク。

 でも……ダメなんだ。

 今日だけは、キミの願いをきいてあげることができそうにない。


「これ着て一緒にお出かけしようねっ!」


 ああ、彼女の弾ける笑顔がまた可愛い。

 この笑顔を曇らせるなんて想像するのも嫌だ。

 嫌だけど、この格好だけは……

 ああ、ボクはいったい、どうすればいいんだ?





「あー。一般常識では考えられない服を286フタヒロに着せるってこと?」

「ソウ」

「なんか、いまいちだけどなぁ。それなら、ベビードールでも着させるかぁ」

「オイ!!」

「冗談。冗談。ユキさんと相談して決めるから、楽しみにしてて!」





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