第4話 問②フタヒロ視点【料理の腕前】
今日は週に一度、彼女が家に遊びに来る日だ。
ボクはわくわくしながら彼女を待っている。
呼び鈴が鳴ってドアを開けると、そこには愛しの彼女が立っていた。
両腕にはいっぱい食材が入ったレジ袋を提げている。
「お待たせ! 今日はアレンに美味しいものをいっぱい食べさせてあげるからね!」
満面の笑みでそう言いながら部屋に入って来る。
しかし、ボクの笑顔はひきつっていた。
何故なら、彼女は絶望的に料理が下手だったのだ。
部屋に上がるなり早々と台所へ向かう彼女。
このままではきっと絶望的な料理の数々が出来上がってしまう。
「腕によりをかけて作るからね! 期待して待っててね!」
台所から聞こえてくる彼女の張り切った声。
こんなにもボクを思ってくれる彼女の手料理。
それは分かっている。頭では分かっているのだ。
体が、味覚がついてこないのだ!
彼女に料理を作らせるべきか否か。
突き付けられた難しい二択。
ボクは彼女を阻止すべきなんだろうか?
男らしくガッツリ食べるべきだろうか?
自問自答しながら台所へと向かう僕の足取りは重かった……
◇
「ふん」
今日はユキが家に来ることになっている。手料理を振舞うと言っていたら、事前準備のためにWEBで彼女の手料理について検索をしていた。愛しの彼女がいるというのに、なぜ、足取り重く台所に向かうのだろう?
料理というものは、食材を決められた分量、時間、方法で作るものだというのに、上手と下手の差が生じるのだろう?
人間の感情や行動には、是と否がいつも共存している。不思議な生き物だ。いくら学習しても正解にたどり着くのが難しい。
ボクは、スマホで検索したWEBに目を通しながら、パソコンに向かって声をかけた。
「二尋、今日はユキがくる」
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