第4話 問②フタヒロ視点【料理の腕前】


 今日は週に一度、彼女が家に遊びに来る日だ。

 ボクはわくわくしながら彼女を待っている。


 呼び鈴が鳴ってドアを開けると、そこには愛しの彼女が立っていた。

 両腕にはいっぱい食材が入ったレジ袋を提げている。


「お待たせ! 今日はアレンに美味しいものをいっぱい食べさせてあげるからね!」


 満面の笑みでそう言いながら部屋に入って来る。


 しかし、ボクの笑顔はひきつっていた。

 何故なら、彼女は絶望的に料理が下手だったのだ。


 部屋に上がるなり早々と台所へ向かう彼女。

 このままではきっと絶望的な料理の数々が出来上がってしまう。


「腕によりをかけて作るからね! 期待して待っててね!」


 台所から聞こえてくる彼女の張り切った声。

 こんなにもボクを思ってくれる彼女の手料理。

 それは分かっている。頭では分かっているのだ。

 体が、味覚がついてこないのだ!


 彼女に料理を作らせるべきか否か。

 突き付けられた難しい二択。


 ボクは彼女を阻止すべきなんだろうか?

 男らしくガッツリ食べるべきだろうか?


 自問自答しながら台所へと向かう僕の足取りは重かった……




 「ふん」

 

 今日はユキが家に来ることになっている。手料理を振舞うと言っていたら、事前準備のためにWEBで彼女の手料理について検索をしていた。愛しの彼女がいるというのに、なぜ、足取り重く台所に向かうのだろう? 

 料理というものは、食材を決められた分量、時間、方法で作るものだというのに、上手と下手の差が生じるのだろう?


人間の感情や行動には、是と否がいつも共存している。不思議な生き物だ。いくら学習しても正解にたどり着くのが難しい。


 ボクは、スマホで検索したWEBに目を通しながら、パソコンに向かって声をかけた。


「二尋、今日はユキがくる」




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