第12話 報酬金の分け方
街のお店に入って食事をする。今まで、自分が住む屋敷や貴族のパーティー以外の場所で食事したことが無かった。
家から追い出され、街を経由する旅で庶民の経営するお店に入って食事することを私は覚えた。最初は慣れなかったが、回数を重ねるごとに勝手が分かってきた。
今では、自分で注文が出来るぐらいになっている。
ヴァルタルたちは、慣れた様子で次々と注文していく。店員と自然体で接しながら仲良さそうに会話を交えて、よくこういうお店を利用していることが分かる。
すぐに美味しそうな食事が運ばれてきて、テーブルの上に並んでいく。量も多く、かなり豪華な食事。
「さぁ、乾杯しよう!」
「おう!」
「腹減った」
「今日は疲れたぜ!」
ヴァルタルの仲間たちが、お酒の入ったジョッキを片手に掲げながら、楽しそうにおしゃべりをする。その横に座っている私は、少し居心地が悪かった。私は、ここに座っていて良いのだろうか。場違いではないか。
そんな事を思っていると、ヴァルタルと目が合った。
「ルエラも一緒に、さぁ、ほら!」
「え? あ、わ、わたしは、えっと……、はい」
お酒の入ったジョッキを持たされて、私も一緒に彼らと乾杯する。とても楽しそうな雰囲気で、断ることが出来ない。雰囲気を壊さないよう彼らに合わせて、私も笑顔を浮かべる。ちゃんと笑えているだろうか。
「この美味そうな料理を楽しむ前に、報奨金の分け方について話し合っておこうか」
「……」
「なぁ、ルエラ」
「え? 私ですか?」
盗賊を壊滅させたヴァルタルと仲間たちが、どういう分配で報奨金を分け合うのか。そういう話し合いが始まるのかと思って黙ってたら、彼から名前を呼ばれた。
「もちろんだよ! 俺たちと君たちのパーティーで、受け取った報奨金を半分ずつに分けようかと思っているんだけど。どうかな?」
「いや、そんな。私たちは何もしていませんから。襲われていたところを助けられただけです。むしろ私達は、助けてもらったお礼を支払わないといけないような立場です。だから、そのお金を受け取るわけにはいきませんよ」
ヴァルタルは、受け取ったお金を私たちにも分けようとしてくれた。だが、お金を受け取ることは出来ないと断る。
「いやいや、君たちが居てくれたお陰で手に入った報酬金なんだから。ルエラたちにも、受け取ってもらうよ」
「受け取れません!」
何とかして報奨金を分けようとしてくるヴァルタルに、私は受け取りを拒否する。折り合いがつかないまま、話は続いた。
「……わかった。このお金を渡すのは諦めよう」
とうとう、彼のほうが折れてくれた。絶対に受け取らない、という意志が伝わったらしい。これで話は終わりそうだと思っていたら、ヴァルタルは続けてこう言った。
「その代わりに、1つお願いを聞いてくれるかな?」
「なんでしょう? 私に出来ることなら聞きます」
お願い事とは何か、私は聞き返す。
「君も一緒に、俺たちの旅に同行してくれないかな?」
そして返ってきた彼の答えは、旅に同行して欲しいという願いだった。
一体、どいうことだろうか。私には分からなかった。
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