第13話 同行を求める理由と旅の目的
ヴァルタルは語った。
「ルエラと出会ってから、俺たちはとても順調だ。金が手に入って、権力者たちとの繋がりも出来た」
「……それは、ただの偶然じゃないのでしょうか?」
「確かに、偶然かもしれない。だけど俺は、君が幸運の女神だと思っている」
「いえ、そんなことは……」
私を助けてくれる使用人たちにも言われた。私の幸運に助けられたんだと。続けて言われると、信じてしまいそうになる。しかし、そんな事ありえるのだろうか。
なぜ、クライブ王子や両親たちには幸運が訪れなかったのか。彼らから不運を振りまく存在だと言われ続けてきたのか。
そんな事を私が考えている間に、ヴァルタルは続けて語った。
「俺たちは今、各地を巡って秘宝を探す旅をしているんだ」
「秘宝、ですか……」
聞いたことがある。そのアイテムを手に入れたら何でも望みが叶うという。土地が豊かになったり、身体が健康になったり、金銀財宝が手に入ったりするらしい。だが実際に存在しているのかどうか、それは知らない。
遠い昔、秘宝を求めて争いが起こったりしたという話もあるが。
そんな怪しげな物を探して、彼らは旅をしているのか。彼の話を聞いて、少しだけヴァルタルが疑わしくなってきた。信じて良いのだろうか。
「俺は、この世に秘宝が存在している信じている。ルエラが一緒に来てくれたなら、運良く見つけられるような気がするんだ」
「……」
スッと、私の目の前に手を差し伸べてくる。褐色の肌に筋肉のついた腕。力強さを感じる。ヴァルタルの金色の目は、とても真剣だった。私の顔を真っ直ぐに見つめてくる。
「俺と一緒に来てほしい」
どうするべきか。決められない私は、使用人たちに視線を向ける。本当は、教会に連れて行ってもらう予定だっけけれど。ロウワルノール家から追い出されて、ただの小娘となった私は修道女として保護してもらう計画があった。そちらを優先するべきなのかな。
「お嬢様のなさりたいように。我々は、貴女についていきます」
「そう」
使用人やメイドたちは、頷いていた。ヴァルタルと一緒に行ったとしても、彼らは私と共に来てくれるらしい。どうするのか、判断は任された。
私は少し考えてから、自分の気持ちに従ってヴァルタルの手を取った。彼と、もうしばらく一緒に居たいと感じたから。
もしも不運があったとしても、ヴァルタルは私のことを責めないだろうと思った。そういう信頼感があった。
「よろしくおねがいします」
「うん。よろしく」
ヴァルタルの手を握ると、ギュッと力強く握り返された。彼は、嬉しそうな笑顔を浮かべて私の選択を歓迎してくれた。それたけで私は、ホッと落ち着くような安心感に包まれた。
これで良かったんだと思えた。
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