第35話
しばらく経って天野父いや天野正男さんが泣き止んだ。
「悪かったな」とぶっきらぼうに言った。
「いえいえ。なんてことはないですよ。コップ空いてますよ」と注ごうとする俺。
「いやいい。これから出掛ける付き合え。名前は何だお前は。」
「翔ですよ。よろしくお願いします。お父さん」
「お父さん言うな!!」
「はいはい正男さん」
「全く調子が狂うガキだぜ」苦々しそうに言う。
「何か物はありますか?」と聞いた俺。
「ないな。いや線香とライターだな」
俺たちは準備を終えると玄関を出た。
「「・・・」」
無言が続く
「何か話せよ」と正男さんが言った。
「無茶ぶりしますねーそうですね娘さんのバイトしていること知っていますか?」
「ああ。そうらしいな」
「俺も同じとこで働いているんですが」
「何!そうだったのかまさかうちの娘を狙って同じ職場にしたんじゃないだろうな!」
「いやいやたまたまですよ!たまたま!」
「本当だろうな」
案外この人めんどくさいな
「本当ですよ!俺が半額シール貼るんですけどそこに「貼って」っていう天野が可愛くてですねー」
「お前やはり娘のこと狙ってんだろ!!」
「冗談ですよ冗談半分は」俺は調子良さそうに言った
「残り半分は何なんだ!たく調子が狂うガキだぜ。」苦々しそうに言う天野父。
「ははは。まぁ心配なら娘さんのバイトの様子みたほうがいいんじゃないですか?」
「そんなことできないだろ!それにそんな資格ないだろ」と少し自信なさほうに言った。
「父親が見に来るんですからいいんじゃないですか?それに買い物ついでに見に行けばいいでしょう?」
「それはそうなんだが親バカみたいだろ」
「いや。十分親バカですよ〜」からかうように言った。
「何だと!このガキ!」
「でも、いいんじゃないですか。そのくらい親バカの方が娘さんに愛が伝わりますよ」
「でも、うざいだろ」
「いいじゃないですかウザがられても」
「嫌われるだろ」
「嫌いになんかならないですよ。それこそ一時の反抗期があるかもしれませんが」
そのくらいがちょうどいいだろ
「そんなもんか」
「そんなもんですよ」
とまあ天野正男さんと談笑しながら移動した。
「着いたぞ」と天野父は言った。
「お寺ですか?」俺は思わず聞いた。
「見たらわかるだろ。着いてこい」
俺は案内されるまま着いていきある一つの墓についた。
そこには天野と書かれていた。
「ここは春香さんのお母さんのお墓ですか?」
「そうだ」
「何で俺をここに連れてきたんですか春香さんときたほうがいいんじゃないですか?」
何で俺を連れてきたんだろう?
「俺もなぜ連れてきたかわからんだけどな何となく連れてきた」
何だそりゃあ?
「なんですかそりゃあ」
「わからん。だけどな。お前の言葉はそこらの奴より俺の心に響いただから連れてきたそんなところだな」と恥ずかしそうに言った。
「そうなんですか」
「そうだな。線香に火をつけてくれ」
「わかりました」
俺は線香に火をつけそして天野正男さんに手渡す。
「悪いな」
俺たちは線香を入れてを手を合わせる。
「随分と長くきてなかったな」と正男さんは言った。
「そんなにですか?」
「そうだな。嫁が亡くなって以来きてないな」とタバコに火をつける
「そうなんですか?」
「色々あったからな。一つ昔話をしてやるよ」
タバコにをくわえながら言った。
「どんな話ですか?」
「なあに俺とうちの嫁の話だ。」
ふう〜とタバコの煙を出す。
「俺はいや俺と嫁は孤児だったんだよ。」
「そうだったんですか?」
「ああ。でな当時の俺はそのことでグレてだんだよ」
「へぇ〜」
グレてる印象はあったが
「でな?嫁がいつもそれを注意して初めは鬱陶しいと思ったんだが次第に心地よくなって一緒になったんだ」
「惚気ですか」
これじゃただの惚気を聞かされてるだけだろ
「まぁそんなもんだ。で、春香が生まれるんだけどな。生まれてから嫁の体調が悪くなってきてそのまま死んだ。それからはそのまま転落し人生だ。何やるにしてもやる気が起こらないし気力も湧かなかった。」
「・・・」
俺は何も言えなかった。何か言おうとしたが何も浮かばなかった。
「そんな顔するな。同情して欲しくて話してるわけじゃない。ただお前に話しておかないといけない気がして話したんだよ」
「これからは前に進めそうですか?」
俺は何となくそれを聞かないといけないと思った。
彼は少し驚いていたがすぐに
「ああ。何とかな。また歩いてみる」と笑いながら言った。
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