第34話

俺は今、天野の父親と対峙しているのだがどうすればいいかな?


「お前も今日は帰れ。」とぶっきらぼうに天野父は言う。


(なんか天野がいる時と様子が違うな)


「そんなこと言わずに春香さんのお父さん」と俺は言った。


「お父さんって言うな!」と怒鳴られた。


「んじゃあ?なんて呼べばいいんだ?」


「天野正男(あまのまさお)だ正男と呼べ」ぶっきらぼうと言う


「それでは正男さんと呼びます」


「呼ばなくていいから帰れ!」と怒鳴られてしまう。


「そんなこと言わないでどうですか?」と俺は酒瓶とコップを差し出す。


「普通止めねえか?」と懐疑的な目でみる。


「普通はそうですけど人生長いですから今日ぐらいは付き合いますよ」


「お前本当に高校生か?全く」と呆れたようにのむ。


三十分後程よく酔った天野の父親が


「でもよ。いいのかよ?俺みたいなクズにこんなことして?」と聞いてきた。


「別にまだ巻き返せるでしょ?それにあなたは娘さんのこと大事に思ってるでしょ?」


「俺は娘に暴力振るったんだぞ」


「今回一度だけと聞きました。もうしなければいいでしょ?」


「働いてないで家で昼間から飲んでんだぞ!」


「これから働けばいい。」


「そんな簡単にいくかよ!」


「いかないでしょう。」


「どうすればいいんだよ?」


「どうしましょう?」


「ふざけてるのか!」


「ふざけてはいませんがまぁまだ何とかなるでしょうまだ天野いや春香さんも生きていますしね。」


「何ともならねえよもう俺は!動けないんだよ!」


「また後悔をするつもりですか!」


「!!何が言いたいんだよ!」と胸ぐらを掴む


「いいか!立ち止まるのは仕方ないけど!だけど立ち止まり続けたらそこには後悔しか残んないんだよ!」


「でもよ!でも!」たじろぐ天野父。


「でもじゃない!あなたが立ち止まり続けても誰も助けてはくれない!だけど進みたいと思うなら!あなたには助けてくれる人がいるじゃないか!」


「だけど!俺は一人じゃ立ち上がれないんだよ!」


「なら助けてくれって!そう言えよ!そうすれば誰かがいつか手を貸して立ち上がらせてくれる!」


「そんな甘くねえよ!現実はもっと厳しくてー」と怒鳴る


「あなたが歩いた道は不幸だけだったのかよ!」


「!!」


「不幸だけなら春香さんは生まれてないでしょ?今まで歩いた道に本当に幸せは一つもなかったのかよ!違うだろ!」


「う。う。俺はどうしたかいいんだ?」


「わかるだろもうアンタはその足で立って少しずつでも前に歩けばいい。そうすれば幸せが待ってるはずだ。」


「また不幸が来たらどうすればー」泣きながら尋ねる。


「その時はまた手を伸ばして助けを求めればいい一人じゃダメなことでも二人なら乗り越えていけるそうでしょ?それにー」


「不幸以上に幸せもたくさんあるでしょ?」


「うううう」

彼は泣いている。でもいいだろう今日ぐらいは。彼も父親である前に一人の人間なのだから。

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