第2話


「真っ白...」


俺のセリフとは対照的に、

地味子は顔を真っ赤にした。


「見たのね...!私のスカートの中!!」


慌てて体勢を立て直し、

ちょっと、正座を崩したみたいな姿勢になって

俺の方を見てるみたいだった。

みたいだった、と書いたのには訳があって。

地味子のやつ、重ため前髪と黒縁眼鏡で

顔ってゆーか、表情を隠していたから、

こっちを見ている、はあくまで俺の想像だった。


ま、最も。

顔はこっちを向いてるんだが、

どんな表情してるのかは不明だ。


でもな、口調は怒っている風だった。


「なんで、止めたのよ...!

飛び降りる予定だったのに...!」


「まてまて、早まるなよ。

何か理由があって、落ちようとしたんだろ。

何か困ってることがあれば、俺でよければ相談にのるし」


「大体な、俺の妹は先日、白血病で亡くなったんだが、生きたくても生きれなかったんだぞ。

おまえは別段、見たところ、そこそこ?健康そうなのに、自ら、命を断つとか、天国にいる俺の妹に悪いと思わないのか??」


自分の妹を引き合いに出し、

地味子の様子を伺った俺。



地味はふっと、肩の荷を下ろした風に、

少しふにゃんとなった。


「少し話すと。私が飛び降りようとした理由はまず、

地味子だの陰キャだの陰口をたたかれて

嫌になってて。胸だけでかい女とかって男子や女子に言われてて。嫌がらせだと思うんだけど、上履きはほぼ毎日のように

行方不明になるし。だから、ほら、見てよ。いつも来客用スリッパ履いてんの」


地味子がほら、と指差した方角に、

乱雑に茶色い、色気のないスリッパが

脱ぎ捨てられてた。


地味子は靴下だけ履いた状態で

がしがしとフェンスによじ登っていた。


「あと、あれだな、

多分、成績が学年一位だから妬みもあるんだろうな...」


地味子は頭が良かった。はっきり言っちゃいけないとは思うけど。

友達がいないみたいで、孤独だから。

その分、遊ぶ時間がなくて勉強時間に充てれた感じ。


「かもね....」


「陰キャとか地味子とか言われるのはさ、

外見変えればいいわけだから、簡単じゃね?」



「それが....」


「ん?」


「どうやっていいのかわからないの...」


「え?」


「雑誌とか見て化粧とかすればいいんじゃね?」


「化粧品とか買うお金ない...

うち、貧乏な母子家庭なの...

私、妹、三人もいるの...」


「そ、そうなのか。林さん、四人姉妹の長女なのか...」








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