第10話 洗礼を受けた件
この世界では、前世の日本のように治安が良くない。病気やケガに対しても教会で回復魔法に頼るだけしかなく、教会に対して寄付ができない家庭では、病気になっても治す方法がなく、子供が生まれてもなくなることが多い世界である。
だからこそ、五歳になったときに、これまでの成長を祝い、どのように成長していくのかを、神に祈る習慣として洗礼というものがあるそうだ。
ステータス魔法というのも洗礼で神に祈った結果授与される。
一般的には五歳、十歳、十五歳でお祝いし、十五歳で成人となる。という説明を昨日の夜に大賢者に聞き知った。
(言われてみれば、今まで祝られたことがなかったな~)
アルは洗礼用の服に袖を通しながら、この世界の常識について考えていた。
「アル様、もうそろそろ洗礼の時間です。準備はできていますか?」
扉の向こうからノックした後にシャルの声が聞こえ、アルはシャルを入れた。
「シャルかい?もう準備はできているよ」
いつもと同じメイド服に無表情で呼びに来たシャルと一緒に部屋を出て、玄関に向かう。
玄関前には、カルレイン、アレイナ、シルトの三人が待っていた。
「父上、お待たせして申し訳ありません。」
アルはカルラインに遅れたことを謝罪する。カルラインは笑顔で返す。
「かまわないよ。それにしてもアルは正装したら、見違えるな」
「うん。アルは正装していなくてもイケメンだけど、正装したら本当に見違えるよ」
セルトはカルラインの言葉に同意を示し、笑いかけて来る。
「父上、セルト兄様、ありがとうございます。」
アルは満面の笑みで、素直に答えた。
「皆様、待たせしました。用意が出来ましたのでお乗りください。」
執事長のギルバルトが馬車の扉を開き、隣で待機する。
家族四人で馬車に乗っていく。一番奥がカルラインで、その隣にアレイナが座った。アルとセルトはその対面に並んで座った。
「それでは、出発いたします」
ギルバルトの合図の後、馬車はゆっくりと進み始めた。
「そういえば、ステータス魔法を授けられるって、どんな形で見えるようになるのですか?」
アルは鑑定で見たステータスの出方は知っているが、ステータス魔法は知らないので、セルトに聞いてみた。
「そっか。アルは見たことなかったからね。。僕のを見せてあげるよ!」
そう言いながら、セルトは唱えた。
『ステータスオープン』
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【ステータス】
【名前】セルト・グラフィール
【種族】人族 【性別】男性 【年齢】八歳
【称号】《公爵家次男》
【レベル】1 【体力】300/300 【魔力】240/240 【能力】D
【魔法スキル】《無魔法レベル1》《火魔法レベル2》《風魔法レベル1》
【加護】《魔法神の加護レベル4》
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「へ~こんな風に出て来るんだね。魔法神の加護も貰っているだね」
アルはステータスを見て鑑定の結果と同じだった。
「セルトは魔法神の加護レベル4を持っているから将来、宮廷魔法師になれるかもね」
カルラインは笑顔だ。セルトのステータスは相当優秀だということがわかる。
「魔法と加護は最大レベル1~レベル10まであり、高ければ高いほど強くなれる可能性がある。鍛えれば鍛えるほど魔法のレベルは上がるし、神に認められれば加護レベルが上がることもある」
レベル10に行くと歴史に名を残すことが多い
馬車の窓から、街並みを見並みを眺めていたが、このグラフィルの町は多くの商店や屋台が並び、行き交い賑やかないい街に思えた。
馬車に揺られて、三十分ぐらいで教会に着くと、正門前で馬車を降り、受付に向かった。
「カルライン・グラフィールだ。今日は息子の五歳の洗礼を受けにやって来た。司祭には伝えたはずだが」
カルラインは受付にいるシスターに話しかけた。
「はい。司祭様より伺っております。こちらへどうぞ領主様」
シスターは相手が領主ということもあり、姿勢正しく礼をし、家族みんなの先頭を歩き誘導して行く。廊下を進んだ後、扉を開け一礼をした。
「今、祭壇の準備をしておりますので、もう少々お待ちください。」
案内された部屋は物があまりなく、落ち着いた雰囲気に部屋だった。
シスターが紅茶を用意した。
「お時間になりましたら、お迎えにあがりますので、もう少しお待ちください。」
シスターは部屋を退出し、家族だけになったところで、カルラインが口を開く。
「いよいよだなアル。そこまで緊張しなくても、司祭がその都度おしえてくれるからね。」
「アルも、加護やスキルを一杯貰えるといいね!」
セルトはアルにことばをかけた。
アルは待っている間、紅茶を飲み一息ついた。
家族で談笑しているいると、シスターがノックをして入ってきた。
「領主様、準備が出来ましたので、ご案内いたします。」
シスターの案内で、廊下を進むと、祭壇の部屋についた。
「アルレイン様こちらの部屋が祭壇となっております。」
中へ入ると白の服に金で縁取られた豪華な服を着ている壮年の男性が待っており、奥には転生する時に出会った神々の像が佇んでいた。陽光がステンドガラスの窓から差し込んできており、幻想的に輝いていた。
「領主様、お待たせいたしました。では、これよりアルレイン・グラフィールの洗礼を開始したいと思います。アルレイン様では、前にお進みください。
カルレインに促され、アルは前に進み片膝をついて顔の前で手を組む合わせる。
「アルレイン・グラフィールよ。ゼファー教が讃える九柱の神が、そなたの五歳の誕生日を祝う」
司祭はそのまま神々の像の前まで行き、膝をつき手を合わせる。
「この世界を創造し見守る神々よ。アルレイン・グラフィールが無事二歳になったことを報告いたします。そして彼の者に神々が造りしこの世界で生きるための道を照らしたまえ」
その瞬間九柱の像から、祭壇の部屋を埋め尽くすほどの光を発した。
死んだら神々に、転生させてもらった件 ハル @suzukiharuto
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