第16話 碌でもない天使達
「ふっ、苦戦しているようだな
「っ! 貴方は!?」
そんな彼女の背中を支える様に、一人の男子生徒が現れた。
「俺の名は
髪を銀色に染めているが、ちょっと失敗したのか黒い部分が結構見え隠れしていた。当然、
「おい
「
「そうだよ
「だからな
「
「る、るしふぁー……」
「堕天使が天使を助けるとか、ワロス! デュフフフフ!」
「わ、笑うなー!」
よほど自分の名前が嫌いなのか必死に名前をルシファーと呼ばそうとしてくるが、俺達はそれに付き合う気は毛頭ない。なぜならこの学校において名前で呼び合うのは校則であり、そして校則を破れば鬼教官からどんなお仕置きを受けるかわかったものじゃないからだ。
「ふ、ふん。まあいい。この俺が付いたからには冥界に住むダークネス・シャイニングドラゴンが味方に付いた位の気持ちでいるがいい!」
そう言って自信満々に髪を掻き上げる仕草はあまり様になっていない。と言うより多分主演俳優になれるくらいよっぽどのイケメンじゃないと似合わないと思う。まあ、ドラゴンの部分にはあえて突っ込まないが、それよりも
「ところで貴方、クラスメイトでしたっけ?」
「……え?」
「な、なあ武蔵? 君は俺の事を知っているよな?」
「………………ぁぁ。多分……」
滅茶苦茶気まずそうに視線を逸らす。その仕草だけで武蔵が
「なあ
「えーと。多分同じクラスだとは思うんだけど、すまないが覚えてないんだ。おかしいなぁ……このクラスの名前は大体覚えたと思ってたんだけどなぁ」
「ぐっは……」
とはいえ、別にこれは可笑しなことではないと思う。まだ入学して一月も経っていないのだ。同性ならともかく、異性のクラスメイトで覚えていない奴くらいいるだろう。それがたまたま重なったに過ぎない。少なくとも、男子はちゃんと
「くそぉ……なんで俺を知らないんだよぉ。自分で言うのもなんだけど結構キャラ立ってるだろぉ……俺だって頑張ってんだぞぉ」
だが当の本人はよっぽどこたえたのか、必死に自分の事を知っているであろう女子を探す。だが今いる女子の誰もが
「はっ! そうだ!」
「ってあいつは!」
「わっ!」
その人物に気付いたのは、多分俺が一番最初だった。咄嗟に
「筋肉ダーッシュ!」
「
「ロリータダーッシュ!」
「デュフフフフー!」
「貴様等のその掛け声が必要なのか!?」
俺だけじゃない。クラスメイトのほとんどが無事に廊下へ逃げ出すことに成功したようだ。というか、こいつら結構余裕があるな。そう思っていると――
「アタシを
「ぎゃああああああああああ!」
「いやああああですわぁぁぁぁぁぁ!」
一人の少女の慟哭と共に、
「なんでわざわざ眠って大人しい状態の狼を起こすのか……」
「まあ、馬鹿なんだろうな」
呆れたように俺に返答してくる武蔵は、はあ、と溜息を吐いた。周囲も納得しているし、やっぱり
声の主はこのクラスでも随一を誇るであろう凶暴さを持つ少女、
しかし、教室の中からは未だに悲鳴が続いている。
「触らぬ
「お帰り
「ふふふー。そんなのビクビク怯えてる変態達を見れば分かるしー。どーせまた
そう言って自然な動作で四つん這いになった
どうも桜庭春香教官と
しかしこうして見ると、田中や佐藤、鈴木といった苗字のように、やはりキラキラネームにもありふれた名前というのはある。このクラスでの筆頭は当然、天使だ。
「……このクラス。碌な天使がいねえな」
願うくは、他のクラスにまともな天使がいますように。そう思う俺は悪くないはずだ。
そんな風に
「まだ、おばちゃんのお弁当食べ途中だったのに……」
そんな声を聞いてしまった俺は――
選択肢①――
選択肢②――あと五分の辛抱だ。予鈴から本鈴までもさらに五分あるから弁当も食べられる。
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