第8話 土の中


「あんまり深く埋まっているゴミは止めるんだぞ、土壌に良い菌と悪い菌がいる。赤ちゃんがいるお母さんには悪い場合があるから」

「うん、わかった! 」

息子は明るく答え、私と手分けをして、広い園内を掃除し始めた。たくさんのゴミが集まったが、それも息子にしては宝探しのような楽しさがあるのだろう。何年かに一度は「おもちゃ」を見つけることもあった。

 妻は座ってひなたぼっこをのんびりと楽しみ、そろそろ昼時なので、お弁当を広げ始めた。すると、冬の間、一カ所だけ使える蛇口から、勢いよく水の音がする。どう見ても子供の使い方だ。

「ああ、何か見つけたんだろうけど、これだけ水を出すと言うことは、かなり汚れた物だろうに・・・・」

最初の私の言葉もどこかに飛んでいったのだろう、私も手を洗うため、同じ所に向かった。

しかし、息子の背中を見た途端、何故か奇妙な感じがした。あまりにも夢中なのだ。おもちゃであったら、もっと楽しそうにするはずなのに、そんなところは全く見受けられない。どこか職人めいた感じさえする。

 妻も何かおかしいと感じたのだろう、息子のところに来ていたが、親二人が声さえかけるのをためらうほどの真剣さだ。コロンとおいてあったタワシを使い、ゴシゴシと念入りに洗っている。そして

「ああ、きれいになった!! これ本物かな!! 」

息子はそれを日にかざすと、キラリと光った。

「お父さん! お母さん! これ猫のネックレスでしょ!! きれいだね、土の中からちょっと見えたから・・・それに、裏に名前がある漢字の三と毛

三毛・・もしかしたらあの・・・・」

それを聞いたとたん、妻は息子のところに行き、奪い去るようにそのネックレス、昔は首輪と言われていた物を見て、皮に刻印されている字を見つめ、そして、抱きしめた。


「三毛様! ああ! 三毛様!!! 」


その姿を見た息子が気が付かないはずはなかった。


「お母さん・・・三毛様の猫人だったの・・・・・」


この国で最も有名な猫であり、あの第一猫に比すると言われる存在、

それが雄猫の三毛様だった。

               


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