第7話 野生の法


 動物と話せるようになり、なぜこのような状態に至ったのかという最大の理由は、彼らは「強運と実力を兼ね備えた真の強者」であるということだった。


「野生動物に比べれば、人間は楽」とは言われていたが、話しをすればするほど彼らが「人間以上の考え」を持っていることがあまりにも多く、この地球の生態系のバランスまでも考慮していたことに、人間は言葉なく反省するしかなかった。


 そういえばそうなのだ。おなかがいっぱいになったライオンは、横をシマウマが通っても、決して襲い掛かったりはしない。彼らは残酷でも残虐でもないのだ。



「子供にオタリア取り方を教えているので、殺す必要はない。むしろ殺しては恐怖を与えてしまうだろう。最初は成功したことを素直に喜ぶ気持ちが大切なんだ」


賢いと言われているシャチは、人間の質問にこう答えた。


 ある海域に住むシャチは、浜辺で遊ぶオタリアの子供を食べるが、

砂浜に彼らシャチの巨体を乗り上げるのは至難の業である。

人間は長年の研究により、シャチがこの方法を「やってみたい」と思っている子供に、出来る者が教え、またオタリアに見立てた藻を用意して練習することもわかっていた。

そして、訓練の末、子供のシャチは実際にオタリアを捕獲できたにもかかわらず、しばらくしてオタリアを放してしまったのである。しかもそのオタリアはほとんど「無傷」だった。このようなことが度々あるので、シャチの研究者は頭をひねっていた。


「何故すぐにオタリアを食べなかったのか」


それに対するシャチの答えは、あまりにも人間的で、また理想的な教育方法の一つであった。


 野生で生き残るための自身の優れた能力、しかも親となれば、生き残ることを教える教育者でなければならない。人間達は動物たちが話す自分たちの言葉でそのことを思い知らされた。野生動物は運で宝くじに当たった者ではなく、実力でその金額を稼ぎ出すスポーツ選手のような存在であったのだ。

そして目的はお金ではなく、子孫を残す、という生態系のルールを遵守したものであった。


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