第6話  白ガラス様


「白ガラス様、か・・・」


 動物に対し、かなり好意的な私の両親が、白ガラス様のことを楽しげに話す孫に、ふと漏らした言葉だった。両親達の年齢は、丁度この世界へ移り変わっていくまっただ中だったので、複雑な思いもあるのだろう。まさかカラスに「様」をつける時代が来ようとは、誰も想像しなかった事に違いない。


「いけなかったかな、子供は敏感だから」

息子が眠ってから、大人だけで話した。

「特に私たちの住んでいる所では、白ガラス様の力は絶大ですから」

妻が言った。

「危険運転の車が来ていると、登校途中の子供に知らせたんだってな、

あの子が誇らしそうに言ったよ、素晴らしい事だ」

「ねえ、本当にお父さんもお母さんも疑問はなかったの? この制度が出来たとき」

「だって・・・子供を育てている者は基本免除なんて、思いやりも動物たちに負けている気がする」


 そう、結婚をして子供を育てている場合は、基本彼らのための仕事はしなくても良い。私は独身時代にやっていたことを、自主的に続けていただけなのだ。それはあの場所が自然豊かな公園で、子供の遊び場にも丁度良かったこと。そして今までも、これからも、他の人と比べて仕事が少ないと思ったからである。


「白ガラス様の子供達は、やっぱりどこか白いのか? 」

「白ガラス様は、翼の一部分だけが白いだけだからかな、子供達には遺伝しなかったみたいだよ。だから人間の監視役には最適だ」

「まあ、山の奥だから、汚しても見つからないと思ったのかもしれないけれど、それは甘い甘い、生き物はどこにだっているのだから。イタチ様だっていらっしゃる」

「え! お義母さん、イタチ人だったんですか? 」

「あ! 言っちゃった! でも私はお役御免になったのよ。この子がサンコウチョウ人になったから、イタチ様から「君の子供のために、この仕事は辞めた方がいいよ。今まで色々ありがとう、これからも元気で仲良く過ごして」って言ってくださったの。もう・・・私にとってイタチ様ほど優れた方はいないわ。それに近くで見ると本当に可愛い、信じられないくらい。だから


「どうしてイタチ様はもっと表に出て行かれないのですか? あなたの賢さ、優しさは、もっと多くの人間が知るべきです」って。そうしたら

「私は騒がしいのが苦手だから」と仰っていたの。まあ、この話はあの子が小学校の高学年になってから話しましょうか」

「自分はイタチ様って言うのに、孫の白ガラス様は不思議なの? 」

「だってイタチ様は特別だから」

「結局自分の主人の動物が一番って事だ、ハハハ、俺は犬人だから、まあ面白い話しはたくさんあるぞ」

「子供の頃聞き飽きたよ、それ」


家族で楽しく話した。




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