第5話 子供の考え


「だって、独り占め公園は大好きだもん」


 車内でうれしそうに、小学校二年生の息子はそう言った。生まれてから年に何度かこの公園に連れてきているから、愛着がわくのかもしれない。公園と言っても山奥の、ロッジがあるキャンプ場だ。だから来ている人間が極端に少ない。サンコウチョウの時期には数人の野鳥愛好家が常にいるが、遊具など使おうはずもない。だからここに息子が来ると、滑り台も、ターザンロープも、横方向だけにすすむボルダリングも、自分の好きなだけ遊べる。「独り占め公園」とは、息子ながらなかなかのネーミングだ。

 冬が終わる頃、ここでゴミ拾いをすることが、私の、サンコウチョウ人としての最大の仕事だった。それほど山の奥にまでは入らないが、ロッジの管理人が見落とした小さなビニール片などを拾っていく。誤って幼鳥が口に入れないようにするためだ。


「あんまり遠くに行かないでね、お母さん捜しにいけないわ」

「わかっているよ、お母さん、今日は見学してて、僕頑張るから」

「まあ、すごいわね、お兄ちゃん」

と妻は少し大きくなったお腹を、シートベルトの隙間からさすった。


 公園に着くと、私たち夫婦は大きなため息をついた。それはキャンプ場の炊事場にゴミがたくさんあったからだ。また道の横には、炭の段ボールやらアルミホイル、使い終わった炭は横の竹藪に捨てて、という具合だった。ここは冬は開けてはいない、

勝手に使用しているのだ。


「今年は暖冬だから、バーベキューが出来たんだろうけれど・・・」

車でここまで来ているのだから、ゴミが持って帰れませんはあり得ない。今まではこんなことは無かったため、息子がどう思うか、親としてどう言おうかと二人で考えていると、息子はけろりとした顔で


「馬鹿だなあ、白カラス様が見ているのに。白カラス様の息子は数を記憶するのが得意だって言っていたよ。こんなことをした人間は、車のナンバーを覚えられる。そういう人が「お城に住む人」になるんでしょ? お父さん」


「ああ・・・そういうことだ」


お城に住む人、動物たちの召使いとなり、彼らの許可が無ければ、その場

所から出ることも出来ない人間達が存在しているのだ。

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