滞在7日目 〜前編〜

さて、本日は島の祭りが行われる日である。

相も変わらず5時に彼は誰は目を覚ました。

そして、いつものように目覚ましを鳴る前に止めるとカーテンを開く。

そして今では日課のように隣の壁をコンコンコンとノックした。

さっと着替えを済ませてコーヒーの準備をしていると、コンコンコンとノックが返ってくる。

やはりいつもと変わらず弱々しい音である。

その後に彼は誰はふっと笑みを漏らして2人分のコーヒーを注いだ。

入れたてのコーヒーを持って彼は誰は葉山の部屋へと向かう。

ドアをノックすると、少し間を置いてがちゃりとドアが開く。

こちらもいつもと変わらずに眠そうな顔をした葉山が顔を見せた。


彼は誰を招き入れると扉を閉め、ベッドの端へと座る。


「案外短いものだね」


「ん?」


コーヒーを手渡しながら彼は誰はそういう。

しかしまだ寝ぼけ眼の葉山には何のことなのかわからないらしく、ぼやっとした様子で首を傾げた。


「この旅が終わるのがってこと?」


ふわっとした様子で葉山は彼は誰に問いかける。

その様子が可愛らしく写ったのか、彼は誰はクスリと笑みを漏らした。


「まだまだ眠気が取れないようだね」


そういうと、わざと熱い方の珈琲を手渡す。


「ありがとう。一服して飯でも行こう

か」


葉山はコーヒーを受け取るとそう言って口に運んだ。

特に何を話すでもなく2人は並んでコーヒーを口へと運ぶ。

今ではこの静かな沈黙もお互いに嫌いではない様子だ。

だった7日、しかしもう7日である。

似たもの同士であるからこそ、沈黙も苦ではないのかもしれない。

コーヒーを飲み終わると葉山はベッドの向こう側へと移動した。

どうやら着替えをするらしい。

背を向けるのは葉山なりの気遣いなのだろう。

そんな葉山の気遣いに気づかない彼は誰は後ろを振り返り、ガラスに写る葉山の身体を見ようとした。


「あっ、、、っ!!」


しかし、ベッドの端だったため手に持っていたコーヒーはこぼれ彼は誰の手を濡らす。

入れたてのコーヒーなのだ。

その熱さに彼は誰は思わず小さな声をあげて眉をひそめた。


「緋色?大丈夫???それ火傷してるんじゃ、、、一服する前に食堂行こう」


素早く着替え終わった葉山が部屋の鍵を手に取り、有無を言わさず彼は誰の火傷していない方の手を引いて食堂に向かった。


「僕が手を引かれるとはね」


道中、痛みに眉をひそめつつも笑いながら彼は誰は葉山にそう言葉を投げかける。


「そういう冗談を言ってる場合じゃないだろ。火傷の痕でも残ったら、、、」


彼は誰の言葉に今度は葉山が眉をひそめた。

女なのだからとでも言いたいのかもしれない。

食堂に着くと、葉山は彼は誰にトイレの水道で手を冷やすように伝えた。

その間に朝の支度をしているスタッフを葉山が捕まえて氷とタオルを受け取るとトイレから出てきた彼は誰に渡す。


「手間をかけさせたね」


「いいからしっかり冷やすんだ」


そんな話をしながら2人はまた葉山の部屋へと戻る。

部屋に着くと彼は誰をベッドの端へと座らせて荷物から応急処置の道具を取り出した。


「流石、準備がいいね」


ふふっと笑いながらそんなことをいう彼は誰に苦笑いをしながらも葉山は手早く彼は誰の手に薬を塗り、包帯を巻いていく。


「まぁ、どこで何があるかわからないからね」


葉山がそういうと、彼は誰はまたふふっと笑みをこぼした。

彼は誰の手当を済ませると2人は喫煙所へと向かう。

他愛もない話をしながら朝の一服を済ませて朝食へと向かった。




時刻は6時。

どこからかピピピと目覚ましの音が響いた。

どうやら花梨のポケットの中から聞こえるようである。

その音に気づいた花梨はもぞもぞとポケットから携帯を取り出して目覚ましを止めた。


「んんっ。。。あれ、師匠。。。?」


目をこすりながら隣を見ると、そこにはスヤスヤと眠る紫苑の姿があった。

それを見て幸せ気分になった花梨であったがハッと何かを思い出したように布団をめくって自分が服着てるかを確認する。

花梨は自分が問題なく服を着ていたことに安心したような残念なような複雑な顔をした。

そして花梨はまた紫苑の寝顔をじーっと眺める。


(わぁ、師匠と添い寝しちゃったぁでも師匠寝顔可愛いカッコイイ顔立ちもしゅっとしてるし二重だし優しいしいい匂いだしetc)


寝顔を見ながらそんなことを思う花梨であった。

そしてそっと紫苑に近寄り、師匠の香りを味わいたい気持ちになったのだが必死に自分を自制する。


(あ、だめだめ、よし、コーヒー入るまで寝かせてあげようかな)


昂った気持ちを抑え込み軽く伸びをすると花梨は布団をかけ直した。

そしてこっそり紫苑の頭を撫でるとベッドから降りてコーヒーを入れはじめる。

時刻は6時半になろうとしていた。


「師匠、朝ですよ〜」


コーヒーを入れ終わると花梨はそう紫苑に声をかけて揺り起こす。


「ん…お母さ……おはよう?」


母親の夢でも見ていたのだろうか。

寝ぼけ眼で紫苑はそう口走った。


「ふふ、寝坊助さんですね、師匠。私はお母様じゃありませんよ」


その様子があまりにも可愛らしく写ったのだろう。

花梨は微笑みながらそう声をかける。


「おはよう、なんで僕の部屋で寝てたのかは聞かないでおくよ」


ようやく頭が起きてきたらしい紫苑はそういうとぐっと伸びをしてあくびを噛み殺した。

そして紫苑はポーカーフェイスでそう言ったものの顔は真っ赤に染まっている。

動揺を隠しきれなかったようだ。


「ごめんなさい、お掃除して待ってたら疲れで寝てしまいました。って、あれ?師匠、お顔が。、。大丈夫ですか?」


「いや、大丈夫///」


花梨に言われ、自分の顔が赤く染まっていることに気づいたのだろう。

紫苑はそういうと隠すように顔を背けた。


「はい、暖かいコーヒーいれました、どうぞ」


ふふっと微笑みながら花梨がコーヒーを手渡すとお礼を言って紫苑は受け取る。

そして無言でコーヒーを口へと運んだ。


「あっ、それブラック。。。」


紫苑は朝のコーヒーにはミルクや砂糖を入れているのだろうか。

花梨はポツリと呟くように言ったが、紫苑は特に気にする様子もなくコーヒーを口へと運んでいる。


「母親の夢を見たのは何年ぶりだろう。もう、久しくあっていないからな…」


気持ちが落ち着いた頃、紫苑はポツリと独り言のようにいった。 

その言葉に花梨はふと思い出す。

確か、紫苑の母親は亡くなっていたはずである。

ということは、久しく墓参りに行っていないという意味なのであろう。


「師匠のお母様、ですか。帰ったら、お母様の所に参って、想い出話でも聞かせてくださいね笑」


「そうだね、久しぶりに両親の墓参りでもしようかな」


そう言って微笑む花梨に紫苑はふわりと笑顔を浮かべてそう返した。

そして花梨はコーヒー飲み終わったら、風呂入ってそれから朝食取ろうと思っていることを紫苑に伝えた。

祭りの時間を考えて、9時に準備していきませんか?と提案をする。

その話を聞きながら紫苑は過去の情報をまとめてスマホのメモに書いているようだ。

みどりの話を聞いて、万が一忘れたとしても思い出せるようにだろう。

それらを済ませると花梨は風呂に行く支度をするため部屋へと戻っていった。

紫苑も風呂に入るというとこで一緒にフロントへ向かうようだ。




それぞれ入浴の支度を済ませて部屋を出ると、ちょうど朝食を済ませて部屋へと戻ってきた彼は誰と葉山に出くわした。


「あ、おはようございます」


「さくばんは おたのしみ でしたね」


先に声をかけたのは花梨と紫苑だ。

彼は誰と葉山は何やら楽しげに話をしている様子であったが、声をかけられて花梨と紫苑に気づいたようである。


「おや、あなた達はそうでもなかったのかい」


そういう彼は誰に2人が目をやると、彼は誰はどうやら手を怪我したのか、布で包んだ氷?を当てていることに気付く。


「ご想像におまかせするよ?、、、あつあつだね」


「やけどですか?」


気づいた紫苑と花梨は口々にそう言った。


「そんなところだね。あなた達の関係よりは手を焼いてはいないけど」


「??」


ふふっと微笑みながらそう返す彼は誰の言葉に花梨はよく意味がわからないというような、きょとんとした顔をして首を傾げる。


「手はかかるけど、手は焼かれてはいないかな」


紫苑はというと、相変わらずのポーカーフェイスで彼は誰の言葉に動揺を見せる様子もなくそう返す。


「、、、思ったよりは進んだのかな」


「これから進むのさ」


「あの、何の話を。、。?」ぽやーん


彼は誰の言葉に紫苑はサラッと返事を返す。

そんな2人のやり取りの意味がよくわからずに花梨は首を傾げた。


「今日はお祭りだ、楽しもうじゃないか」


特に説明することなく紫苑は笑顔でそう言うと花梨はニコリと笑顔で頷く。

葉山はというと、特に何かいうこともなく彼は誰の傍に立って話を聞いる。


「お互いにね、なあゆうちゃん」


「ん?あぁ、そうだね。でも彼らの未来はあと数年先だなぁ」


彼は誰が葉山の方を見てそう言うと、葉山はにこりと笑みを浮かべて言葉を返した。


「お互い、水を差すこともないね。僕たちはそろそろ行くとするか」


「幸せの形は人それぞれだからね。」


彼は誰がそういうとやはり葉山は笑みを浮かべて返事をする。


「あぁ、そうしようか」


そして彼は誰の言葉に葉山は頷いてそう返したあと部屋へと入って行く。

出かける支度をするのかもしれない。


「ああ、そうそう。アメジストによろしくね」


何故か葉山の部屋に入ろうとしていた彼は誰だったが、入る前に2人を振り返りそう言い残して扉を閉めた。


「アメジスト。、。?」


花梨は彼は誰の言葉を聞いて不思議そうにそう呟く。

そして2人は顔を見合わせて首を傾げたのだが、とりあえずフロントへと向かった。

朝風呂に入りたいと伝えて鍵を開けてもらいそれぞれゆったりと風呂へと入る。





「さて、俺は祭りに行かずに部屋に篭るけど緋色は祭りに行くんだよね?」


「もちろんさ!興味はあるからね。」


部屋に戻ると、葉山は彼は誰に問いかける。

すると彼は誰は笑顔でそう答えて頷いた。

それを聞いて葉山はメモ帳を取り出し、さらさらと何かを書くと彼は誰へと渡す。


「これを彼に会ったら渡してほしい。」


「見てもいいかい?」


葉山が頷くのを待って内容を確認する。

そこにはこう書かれていた。


『ことが済んだらこの島を去る。その後、この島がどうなろうが関与しない』


「ふぅん、、、なるほどね」


彼は誰は読み終わるとそう言ってメモを小さく折りたたむ。

葉山を見ると何を言うわけでもなくニコリと笑みを浮かべた。


「あぁ、そうだ。ゆうちゃんの帽子を一つ貸してもらってもいいかい?」


「帽子を?、、、あぁ、なるほど。いいよ。」


彼は誰の申し出に何かを察したのだろう。

葉山はそう言うと自分の荷物から帽子を一つ取り出して彼は誰に手渡す。


「もし誰かに俺のこと聞かれたらちょっと体調崩して部屋で寝てるとでも言っておいて」


「任せておけ」


葉山がそう言うと彼は誰はニヤリと笑って答えた。

そして葉山は“祭りで絶対に飲み食いしないように”と念を押す。

そんな葉山に心配性だなと思いながらもふふふと笑みを浮かべて頷いた。

そしてそのまま部屋を出て、今度は自分の部屋へと戻る。

出かける準備を済ませ、部屋の戸締りを確認して扉に紙を挟んで閉めるとそのままフロントへと向かった。


「あ、観光の方、、、」


ホテルを歩いて出ようとする彼は誰をフロントにいた人は呼び止める。

自転車はいいのかと聞かれ、彼は誰は最後の日だから歩いて風景を楽しみたいと笑顔で返した。

するとどこか苦笑いにも見える笑顔でフロントの人は納得した風ではある。

お気をつけてと見送りはするものの、彼は誰は何か気づいたようであったが知らないふりをした。




彼は誰は村に向かって歩きながら辺りを見渡してみる。

特に人影も見当たらず、心地よい風が吹いている。

夏特有の暑さはあるが、都会とは違う心地よい暖かさだ。

特に誰に会うと言うこともなく1時間ほどで村へとついた。

時刻は8時になる頃である。

村では祭りの開始に向けて賑わっているようだ。

舞台を囲むようにテーブルをセッティングする人。

テーブルクロスを設置する人。

そのテーブルに花を飾ったり椅子を並べたりしている人。

ちらほらと見た顔がいる様子が窺える。

そしておそらく祭りで出す料理を作っているのか、いい匂いも漂っていた。


(・・・。)


その辺りを見渡してみるが、どうやら薬師丸と三原の姿はないようである。

それを確認すると彼は誰はそのまま旅館へと向かって行った。



旅館に着くと、そちらも賑わっている様子である。

おそらくこちらでも料理などの準備をしているのだろう。

彼は誰は葉山に借りた帽子を確認するとそこの従業員であろう人がいないか探してみる。

すると、ちょうど知った顔を見つけた。

ダイビングの時に見かけた雫の奥さん、ひまわりである。


「忙しいところすまないね」


「あ、ら、、、ええっと、、、あなたは、、、???」


彼は誰が声をかけるとどこかぼんやりとした顔でそう問いかける。

豪快な雰囲気の雫とは違い、ちょっとぽやっとした人のようだ。

少し悩んで彼は誰が旅行者だと思い出したようでニコリと笑みを浮かべた。


「ホテルの宿泊客です」


ひまわりの反応を見て彼は誰はニコリと笑って返す。


「確か、そうでしたわね」


彼は誰の返事にひまわりはまたニコリと笑って頷いた。


「旅館の、、、ええと、青年かな?お呼び頂きたいのですが」


「青年、、、?どの子かしら???」


彼は誰の問いかけにひまわりは首を傾げる。


「よく喋らないほうです」


「ん~、、、蒼君かしら?それとも清君かしら?もしくは、、、樹君かしら?でもみんなよく喋るけれど、、、」


彼は誰がそう言うとひまわりはまた困ったように首を傾げた。


「ああ、失礼しました。旅館に泊まっている、、、」


「泊まっている?、、、あら嫌だ!旅行者さんのことでしたのね?あの可愛らしい顔の男の子のことかしら?」


彼は誰の言葉にひまわりは恥ずかしそうにうっすらと頬を染めて問いかける。


「ええ」


彼は誰はそんなひまわりにニコリとうなずいてから続けて言った。


「落とし物を拾ったので、声をかけよう

かと」


「あらあら、そうでしたのね!確かにお祭りが始まってからは捕まらないかもしれませんからね。確かあの方ならお食事されていたはず。お呼びしますね!」


「お手数かけますね」


すると彼は誰の言葉を疑うことなくひまわりは少し早口にそう答えた。

恐らく勘違いをしてしまったことが恥ずかしかったのだろう。

ひまわりの言葉に彼は誰はそう言って軽く頭を下げた。

彼は誰の言葉を聞いたあと、ひまわりはニコリと微笑むと旅館へと入っていく。

彼は誰はその場で何をするわけでもなく三原がやってくるのを待つことにした。


(呼んでくれるのか、、、借りなくてもよかったかな)


そんなことをぼんやりしながら思っていると、少ししてひまわりに案内されながら三原がやって来た。


「ありがとうございます」


彼は誰がひまわりに礼を言うとそのままひまわりはまた旅館の中へと入って行った。

恐らく準備があるのだろう。


「そこだとお姉さんの邪魔になるよ」


「何か僕の落とし物を拾ったって聞いたけど。あぁ、、、そうだね。端に避けようか」


彼は誰は邪魔にならないように道路の端に避けると三原にそう呼び掛ける。

すると三原もそう返しながらも彼は誰に習って隣へと移動した。


「君はたしか、、、」


「やあ、また会ったね」


彼は誰はそう返しながら手荷物から帽子を取り出した。

三原はというとその様子を不思議そうに見てる。

彼は誰は帽子を取り出す時、帽子の裏、被る部分にメモを忍ばせた。

辺りをチラリと警戒してみたが、祭りの準備に忙しいらしく特にこちらを見ている人はいないようだ。


「はは、あなたもおっちょこちょいだね。落とし物を届けにきたよ」


そんな軽口を言いながら彼は誰は帽子を取り出し三原へと差し出す。


「え?これは、、、」


彼は誰は帽子の中のメモを、三原の影に隠すようにしながら、見せる。

三原は何かを察したようにそれを覗き込んだ。


「ゆうちゃんが気づいたのさ」


「・・・・ありがとうと伝えてくれるか

な」


メモを読み終わると三原はそう返しながら苦笑いを浮かべた。


「あと、そうだ。ふたりによろしく」


「2人?」


三原は首を傾げて彼は誰に尋ねる。

どうやら彼は誰の言いたいことが上手く伝わってないようである。


「、、、花が落ちずに済むかもね」


「、、、そうだね」


それを感じた彼は誰はそう一言付け加えると三原は呟くように返す。

そうなるといいと思っている、そうなって欲しいということかもしれない。

彼は誰自身もどうなるかなんてわからないと言ったところではあるが、紫苑と花梨になにが考えがあるだろうし自分も含めて葉山と田中がことを起こすのだ。

きっと大丈夫さと、自分に言い聞かせるようにニコリと笑みを浮かべた。

三原とはそこで分かれて彼は誰はその場を離れる。

時計を見ると、祭りが始まるまではまだ1時間半ほど余裕がある。

彼は誰は祭りが始まるまでぶらりと村や砂浜を見て回ることにしたようだ。




さて、7:00頃に時間を戻してみよう。

フロントに行って風呂に入っている紫苑と花梨。

花梨はというと貸切状態の風呂に1時間ほどのんびりと入りながら紫苑の寝顔を思い出してはにまにまと幸せそうな笑みを浮かべていた。

そして紫苑はというと、20分ほどで風呂から上がると部屋へと戻りメモを書いている。

先ほどまとめたものに書き足している様子だ。

忘れたとしてもわかるように、事細かに記録していく。

そんなことをしているとあっという間に時間は過ぎていった。



風呂上がりの花梨はと言うと、洗濯物を出した後自分の部屋へと戻る。

そして、出掛ける為に着替えをするようだ。

今日は動きやすさ重視で白のノースリーブに短パン、短い靴下にショートブーツで生足が眩しい。

バッグに携帯などの貴重品をまとめて簡単に荷物の整理を済ませると、部屋を後にした。

そしてそのまま紫苑の部屋へと向かう。



-こんこんすここん-


-コンプガチャ-


花梨の軽快なノックに合わせてガチャリと扉が開くと中から紫苑が顔を出す。


「師匠、朝食へむかいましょう」


「じゃあ行こうか」


花梨の誘いに紫苑は笑顔で答えると、2人は仲良く朝食へと向かった。

2人は9時にはホテルを出れるように時計を見ながらも2〜3人分の朝食を無理やり胃袋へと詰め込む。

昼食を抜いてもいいようにだろう。

2人ともひたすらに黙々と平らげていく。

あぐあぐ、ばくばくと食事を終わらせた2人は苦しさもあって無言でそれぞれの部屋へと帰って行った。



部屋に帰るとそれぞれ祭りに向かう準備を始める。

貴重品はもちろんであるが、デジカメなども持っていくようだ。



時計が9時を指す頃、2人は部屋から出ると自転車を借りて街中をぐるりと回ってみる。

どのお店も流石に今日は閉めているようだ。

その途中で島民らしき人とすれ違ったが、特に何か言われることなくにこりと笑って2人を見てきただけだった。

2人は挨拶だけ軽く交わすとそのまま村へと向かうことにした。

紫苑は村に向かう前にホテルに寄って、自販機で水を何本か購入してそっとバックへと仕舞う。

この夏の暑さである。

いくら飲み食いしないように気をつけてはいても喉は渇くものなのだから用心のためにと言うことだろう。

それに習って花梨も購入することにしたようだ。

そして2人は10時より少し前に村へと着くのであった。


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