滞在6日目 〜中編(1)〜

さてここで紫苑や花梨がすみれとみどりに接触している頃、彼は誰と葉山はどうしていたのだろうか。


2人は何をするでもなくのんびりと島を散歩しているようだ。

計画実行前の休息日とでも言うのだろうか。

他愛もない会話を交わしながら公園で遊んでみたり、城の周りをまた歩いてみたり。

彼は誰にとってもそれは休日というにふさわしいような、のんびりとした時間を過ごしていた。





そして紫苑はというと、花梨が砂浜で蒼と話をしている頃に村へと辿り着いた。

花梨は紫苑の弟子である。

その弟子がやりそうな行動ならば大体の予測はついているというものだ。


「まあ、あそこかな」


村の舞台辺りを中心に花梨がいないか探してみる。

すると紫苑の耳に数人の女性の会話が入ってくる。


「あじさい、どう言うつもりなんだろうね」


「島の外の人と仲良くなったって意味ないのに」


「携帯も使えないしー。といってもこの島に生まれたなら必要ないけど」


声のする方を見ると、旅館で出会った3人が飾り付けをしているようだ。

紫苑はその3人がいる方へと近づいていく。


「この辺で観光客を見かけなかったかな?17歳くらいの女の子。人を探しているのだけれど…君たちは見なかったかな?」


「あら?あなたは、、、」


3人は紫苑の方へ目を向けた。

そして紫苑の声に先に反応を示したのはさっきであった。


「それって、、、」


「さっきの子じゃないかなー?」


紫苑の言葉を聞いて、みもざとあおいもそれぞれ口を開く。

紫苑の勘は正しかったようだ。

一足遅かったようだが、花梨はここにきていたようだ。


「知っているならどこに行ったか教えて欲しいのだけれど…」


紫苑は3人に対して笑顔でそう聞いてみた。

その言葉にみもざとあおいは顔を見合わせてどこに行ったか見ていたかどうかお互いに聞き合っているようだが、残念ながら知らないといった感じである。

そしてさつきはというと紫苑の方を見て黙って何か考えているようだ。

さつきは無表情と言える様子ではあるが、紫苑はそんなさつきの様子をちらりと伺ってみる。

特に嫌われるような会話を交わしたわけではないから知っていたとして嘘をつこうとする理由はないはずだ。

けれども、もしかしたらこれは花梨の居場所を知っていながら嘘をつこうとしているのかもしれないと感じた。

さつきはそんな紫苑の視線に気付き口を開く。


「先程、海の方に向かっていたようですけれど私たちも準備に忙しかったので確実とはいえませんね。けれども、あなたはあの子の保護者でしょうか?あじさいに懐いているようですが、、、祭りが終わるまでは大人しく観光していてくれるようにあなたから言い聞かせていただけると助かります。」


それだけを言うと、いくわよと2人を促して、3人はその場から去っていった。



その頃、花梨はというと、蒼と何気ない会話を交わしていた。

そして紫苑が砂浜へと向かい始める頃にその場を離れ、どこか海が見える場所でみどりとすみれをどうやって救うのか考えようと思いその場を離れた。

そのため、砂浜に紫苑がつく頃にはそこに花梨の姿はなかった。

まだ近くに花梨はいるのではないか。

そう思って周りを見渡した紫苑は今まさに角を曲がろうとする花梨らしき後ろ姿を発見した。

急いでそちらの方向へと自転車を走らせる。

自転車を押して歩いている様子であったので急げば追いつけると考えたのであろう。

紫苑が考えた通り、すぐに追いつくことができた。

やはりそれは花梨であった。


「あれ、こんな所にいたんだね」


「うーん。。。。」


紫苑が声をかけてみるも、俯いて考え事しながらとぼとぼと歩く花梨はその声に気づいていないようである。

紫苑はそんな花梨の様子を見て少し回り込んでみることにした。

少し先に自転車を止めて、花梨が来るであろう正面へと立つ。


「歩きスマホは良くなぐはっ」


そんな紫苑に花梨は気づくことができずにそのまま勢いよく突っ込んだ。


「きゃっ、ご、ごめんなさ。。。あれ?師匠?」


そこでようやく花梨は気付いたようだ。


「やあ、そろそろお昼だし食事でもどうかなと思って」


突っ込まれたとはいえ、そこは流石紫苑である。

ポーカーフェイスな笑顔で爽やかに花梨を誘った。


「あ、そう言えばそうですね。お腹ぐーぐーです」


紫苑の言葉に花梨は自分のお腹が小さく鳴っていることに気づく。

それほど考え込んでいたのだろう。

紫苑の誘いに花梨が頷くと、2人はそのままかふぇへ行くこととなった。


「そういえば、今日は食事の約束をしていてね。少しだけ引き付けてくれると助かる」


かふぇについて自転車を止めながら紫苑は少し小声で花梨にそう説明とお願いをした。

すると、花梨の顔色が変わる。


「(建前)ど、どこの女の子ですか?(((本音)そ、そうなんですね、なにか情報得られればいいのですが。、。))」


「ははは、2人とも男だよ」


花梨の勢いに、紫苑は思わず笑いながらそう弁解をした。

その言葉に花梨はハッとなって冷静さを取り戻す。


「引き付け、ですか?」


「少し気になることがあってね」


花梨の問いかけに紫苑は周りに聞こえない声でそう答えた。


「会えばわかるけど、印象的ではない方かな」


「わかりました、やってみます」


紫苑の言葉に花梨は笑顔でそう答えて頷いた。


「ありがとう」


紫苑が礼をいうと、2人はかふぇの中へと入る。

中に入るとちょうど昼時だからだろうか。

なかなか賑わっている様子である。

2人はコーヒーの注文だけを済ませると、テラス席で待つことを伝えた。

少しすると、双子の片方がコーヒーを運んでくる。

しかし、忙しいのかすぐに店の中へと去って行った。

テラス席には紫苑と花梨しかいない。

ひとまず2人は向かい合って座っている。


「まだ居ませんね」


そう言って花梨はコーヒーを口へと運んだ。

紫苑はというと、コーヒーが届いた後にポケットからメモ帳を取り出して何やら書いている様子である。

そして書き終えたであろう時、顔を上げると花梨と目が合った。

紫苑は先ほど書いたメモを花梨に渡し、コーヒーを口へと運んだ。

そのメモには先ほど紫苑が役場で得た情報が記載されている。

それを読み終えると花梨はバックからペンを取り出してれんげとのやり取りやあじさい達との話、砂浜での話などを書き込んだ。


「あまり島の事情に深入りするものでは無いよ…」


そんなやりとりをしながらも紫苑は花梨に説教をしているふりをする。

村人の目と耳はどこにあるの変わらない為だろう。


「はぁーいパパぁ。。。」


花梨はそんな適当なセリフと悲しむふりをしながら書き上げたメモを紫苑へと返した。


「人には知られたくないこともあるものだよ」


メモに目を通しながらも紫苑はそんなことを口にする。


「あと、今回も「いた」よ。前回の旅行みたいだね」


「.........。」


紫苑は花梨に顔を近づけて小声でそう告げる。

それを聞いた花梨は黙り込んだ。


(わぁ、師匠ちかい。ふわぁぁぁ、)


紫苑としては雪山のことを思い出して黙り込んだものと思っていたのだが、花梨はそんなことを考えているようだ。

紫苑の話は右から左へと走り抜けていった。

花梨の反応を待ちながら紫苑はコーヒーに口をつけ周りに耳を傾けている。

こんな場所で辺りをキョロキョロと見ていては逆に目立ってしまうからだろう。


「薬師丸さん、急ぎましょう!」


「何を急ぐことがあるのかね。こちらから誘ったわけではないのだよ?誘われて仕方なく、そう、仕方なく向かっているのだよ。それに君も知っているように、私は私の時間で動いているのだ。そこは何者にも曲げられない、折れてはいけないところなのだよ」


そんなふうに辺りを警戒していた紫苑の耳に2人の会話が聞こえてきた。

やっとお待ちかねの2人がやってきたようだ。

段々と2人の会話は近づいてくる。

そして2人が自分達に気づくであろう距離に来た時、紫苑は手をひらひらさせた。

そんな紫苑の行動に花梨も2人がやってきたことに気付いたようだ。

そう、そこに現れたのは薬師丸と三原である。

2人と目が合うと、花梨と紫苑は軽く会釈をした。


「あ!ほら、薬師丸さん!お二人がいらっしゃいますよ!」


「やぁやぁ、待たせたね」


慌てた様子の三原とは正反対に、薬師丸はゆったりとした歩調で2人の元へとやってきてそう笑顔で告げた。

紫苑は席を立つと花梨の隣の席へと座る。


「いえいえ、急に呼んでしまってすみません。こちらは弟子の花梨です」


「はじめまして、花梨 風華です。よろしくお願いします」


花梨お得意の上目遣いの笑顔である。

美少女というにふさわしい容姿の花梨のこの笑顔にやられない人は少ないであろう。


「あ、はじめまし」


「おぉ!これは可愛らしいお嬢さんじゃないか。高校生かね?三原君、みたまえ。愛らしいお嬢さんじゃないか。こんな可愛らしいお嬢さんが私の研究所にいたらやる気も出ると言うもんだけれどね。お嬢さん、進路は決まっているかね?もし決まっていないならば、おっと、これはここでは口にしてはいけないんだったな。まぁ、それはともあれ、席に座り食事にしようじゃないか」


三原がそう挨拶する言葉を遮って薬師丸は上機嫌に話し出した。

どうやら花梨の魅力に落ちてしまったようである。

先ほどまで紫苑が座っていた席に三原が、空いていた席に薬師丸が座った。


「あはは、引き抜きはやめてください」


若干、笑顔を引きつらせながら紫苑がそう釘を刺す。


「そういえば私はね、体内時計がしっかりとしているのだよ。お嬢さん、体内時計は知っているかね、これがずれると人というものは体調を崩してしまうのだよ。とはいえ、それでも死ぬわけではない。確かに睡眠が不足すると人は死に至るとも言うけれどもね。私は睡眠よりも食事が重要だと思うのだよ。美味いものを死ぬまで食べたいだけ食べる。そのためには体内時計は重要なのだよ。12時きっかりになると腹時計がなる。これが正常というものだよ。まさに今時間きっかりに私の腹はなっている。あぁ、お嬢さんにこんな話をするのは無粋だったかね。しかしね、若い時はいいのだよ。けれどもそれは歳と共に皺寄せがやってきてそしてやがて体をじわりじわりと蝕んでゆくのだよ」


紫苑の釘もなんなその。

花梨に魅入られた薬師丸は紫苑の存在を気にも止めずに花梨に向かってそう語る。


「し、師匠。。。」


怯えたように若干ぷるぷるしながら花梨は紫苑の方を見て小声で呟く。

そんな花梨を見て紫苑はサッとメモを書いてそっと花梨へ渡した。


「聞き流していいよ」


メモには走り書きでそう書かれている。


「薬師丸さん、その辺でメニューを、、、」


「三原くん、私は食べたい欲も確かにある。しかし、このように美しいお嬢さんを前にして話をしないというのは失礼、そう、失礼というものだよ。話をするとはコミュニケーションということだよ。コミュニケーションは人間関係において最も重要視されることなのだよ。そしてそれがなければ人と人は分かり合えない。私は今、この美しいお嬢さんに私というものを自己紹介しているのだよ。自己紹介と言えば自分をいかにアピールするかにかかっている。口が下手な男は何事においても上へはいけないのだよ。上に行くためにはよく回る口、よく回る頭が必要なのだよ。それを私は今存分にアピールしている。それを君は邪魔しようというのかね?!」


薬師丸は三原の制止を物ともせずにそう語り、花梨を見て満面の笑みを浮かべた。

それに対して花梨は何をいうでもなく引きつった笑顔を返すのが精一杯である。


「弟子もお腹が空いているようだし、なにか注文しましょうか」


助け舟を出すかのように紫苑はそう提案した。

三原はというと花梨と目が合うと「?」という感じで笑みをみせる。

どうやら三原には花梨の魅力が伝わらなかったようだ。


「師匠、三原くん、あまり異性への興味はないみたいです」


そんな三原の反応を見て、花梨はぼそっと耳打ちをする。


「弟子?おぉ!このお嬢さんは紫苑君の弟子だったのか!何をやっているのかね?実に私は興味深い。とはいえ、お腹をすかせた女性を放っておくなんてことは紳士のすることじゃぁない。紳士であれば女性を優先し、女性を丁寧に扱い、女性は優しく壊物を扱うように。それでこそ男の中の男というものだよ。さて、何を頼むことにしようか。あぁ、食事代は気にしなくてもいいとだけいっておこう。美しい女性を交えた食事の代金も払えない男は甲斐性がないというものだよ。それくらいはもちろん私くらいになれば当たり前のように出すものであってステータス、そう、これこそ男のステータスだよ。さぁ、お嬢さん、好きなものを好きなだけ頼みなさい。」


そう言いながら薬師丸がメニューに視線を移した隙を見て紫苑は三原にアイコンタクトを送った。


「?」


しかし、その思いはどうやら三原に届いていないようである。

その様子を察した紫苑はテーブルの下でメモを書いて三原に渡すことにしたようだ。


「えっと、薬師丸さん、でしたね。そんな、悪いですよ。自分の分くらい出しますよ」


そんな紫苑の様子を横目で確認した花梨は、薬師丸の気を引くために声をかけた。

がその顔は笑顔ではなく苦笑になっている。


「いやいや!何をいうんだねお嬢さん!男、薬師丸!そんな無粋なことをさせるわけには行かないのだよ!それに見たところお嬢さんは美しいとは言え高校生なんじゃないかね?高校生に財布の紐を解かせる。そんなことをさせようものならばこの薬師丸の名に傷がつくというものだよ!私くらいになると女性の年齢は関係ないのだがね?そもそも、女性に財布を出させてしまう、そのことが問題というものなのだよ、お嬢さんくらいの年頃であれば同世代の男性と割り勘というものをやるのだろう。しかしだね?私くらいの歳になればそれは恥というものだよ。金も時間もある。いや、私はそれほど時間があるわけではないが財力には自信があるのだよ。そんな私が幼いお嬢さんに財布の紐を溶かせる。それはもう末代までの恥というものなのだよ!」


そんなことを熱弁している薬師丸である。

紫苑の行動なんて目に入るわけがない。

紫苑は「ちょっと2人で話をしませんか?」と走り書きをしたメモを三原にサッと手渡した。

それを読んだ三原は紫苑の方を見ると小さく頷く。

そして三原はかふぇの入り口から双子の1人を呼ぶとサクッと全員分注文を済ませた。

少しすると、次々と料理が運ばれてきてテーブルの上はいっぱいになった。


「さて!頂こうじゃないか!」


そういうと薬師丸はもくもくと食べ始めた。


「ちょっとお手洗いに行ってきますね」


料理が出揃った頃合いを見計らって紫苑はそう告げて店の中へと入っていった。

紫苑がお店の中に入ったことを見届けた後に三原も席を立ち、お手洗いへと向かった。




紫苑がトイレの手洗い場で待っていると、こんこんとノックが聞こえてきた。

扉を開けるとそこには三原が立っている。

紫苑は三原に中に入るように促した。


「あ、どうも」


促されて三原は少し困ったような顔でそう言いながらも中へと入る。


「あまり人に聞かれたくない話なので…」


扉を閉めると紫苑はそう告げた。


「???」


三原はそう言われても何の話なのか見当もつかない様子である。


「三原さんはこの島になにか違和感を覚えたことはありませんか?」


「え?あぁ、、、なんだか特殊な感じではありますね」


紫苑の問いかけに三原は苦笑いを浮かべてそう答えた。


「けれど緑が多くて空気も美味しいし、いいところですよね」


そう言葉を続けるとニコリと笑う。


「いいところではありますね…」


そんな三原の反応にどう話を切り出すのか考えているように黙り込んだ。

少しの沈黙が流れる。

そして考えがまとまったのか紫苑は口を開いた。


「いくつかお聞きしたいことがありまして」


「ん?薬師丸さんではなくて僕にですか?」


紫苑の言葉に三原は首を傾げて問いかける。


「ええ、この島で三原さんによく似た人を見たのですよね。時雨さんって方なのですけれど」


そう言って紫苑は三原の反応を伺っていたのだが、三原はへらっと苦笑いを浮かべた。


「どこにでもいる顔とよく言われるので、、、。因みに時雨さんという知り合いはいないですね、、、」


「そうですか…葉山さんと言い、何か引っかかるのですが…」


そう言って紫苑は三原をじっと見てその心のうちを探ってみる。

その様子と発言から早く席に戻りたい様子だということが読み取れた。

例えるならばどこか気まずい、そんな感じである。


「ところで三原さんはお幾つなのでしょうか?薬師丸さんが若く見えると仰っていたので…」


「恥ずかしながら童顔なので若く見られるんですよね。今年で38ですよ。葉山さんというとあの髪の長い男性ですよね?彼がどうかしたのですか?」


紫苑の問いかけにどこか恥ずかしそうに三原は答えた。

そしてそんな疑問を紫苑に投げかける。


「いえ、彼も三原さんも、この島について何か知っていそうだなと思っていまして…まあたんt…僕の勘です」


探偵、と言いかけて紫苑は慌てて言葉を止め言い直す。

いくらここならば目も耳もないだろうとはいえ、迂闊なことは言うべきではないと思ったのだろう。


「うーん、、、彼についてはわかりませんが僕はこの島にきたのは初めてですよ」


三原はそう答えてニコリと笑った。

そう言った三原に対して紫苑は先ほどと違ってどこか落ち着きを取り戻したように感じる。


(時雨さんが問題かな)


そんなことを思いながら、紫苑は別の話題をふることとした。


「明日のお祭りですが、何を祈願したものなのでしょうね。この島の土着の信仰と何か関係があるのでしょうか?薬師丸さんが専門な気はするのですが、あの方は…少しおしゃべりな方ですから。」


「あぁ、、、薬師丸さんは声も大きく饒舌ですからね。そうですね、僕の経験から言わせて貰えばこう言った閉鎖的な村、土地にはやはり昔ながらの信仰心が根付いているのですよね。なので、きっとそう言った類の祭りなのでしょう」


紫苑の言葉に対して三原はそう言って苦笑いにも似た笑みを浮かべた。

助手をしているのだから、薬師丸ほどではないとはいえ一般人よりは知識があるだろう。


「では最後に一つだけ…この写真のここ、何か写ってる気がするのですが、知りませんか?」


そう言って紫苑は花梨を隠し撮りした時の写真を見せた。

そしてその写真を見せつつ黄色い点の入った部分を指さしてみる。

紫音に差し出されたスマホの写真を三原はじっと見て小さく首を傾げた。

そして「ん〜???」と小さな声を上げると左右に首を振る。


「特に見覚えはないのですが、、、これはなんですか?UFO的な未確認の生物か何かですか?」


三原はどこか目をキラキラさせて紫音にそう問いかけた。


「この島は閉鎖的だし、果物も珍しいものばかりを置いていたし、仮に未確認の生物か発見されてもさほどおかしいことではない。うーんこれは薬師丸さんな聞けば何かわかるかもしれないけれど。いや、でも、、、」


そして紫苑の返事を待たずに三原はぶつぶつと呟きながら考えているようだ。


「崖の方で撮った写真なのですが…以前見た時にはこのようなものは無かったのですよね、僕も気になっているのですよ」


紫音の声にはっとして三原は僅かに顔を赤らめた。

どうやら考え込むと自分の世界に入り込んでしまう類いのようだ。


「なるほど。ならば海外によくある、ある一定の条件で活動が活発になる海の生物が何かかもしれませんね!けれど、もしかしたらその一定の条件でしか見られないということは誰も見たことがない生物の可能性もありますし、さらに言えば撮影に成功した初めての人物が紫苑さん、という可能性もありますよ!」


三原は紫苑の言葉にどこか少し興奮気味にそう話した。

今の三原を見るに、職業病というのだろうか

自分の知らない何かを発見したことに対して興奮していることがよくわかる。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る