滞在5日目 〜中編(2)〜
さて、いつものように少し時間を戻すとしよう。
かふぇで食事をした彼は誰と葉山は島の周りをぐるりと見てまわることとした。
「次はどんな素敵な景色を見せてくれるんだい?」
彼は誰は好奇心に満ちた瞳で葉山に尋ねた。
「そうだな、、、この島のルーツに触れる旅かな」
葉山はそう言ってニヤリと笑う。
そして周りを警戒しながらも島の端を用心深く自転車を引きながら歩いていく。
そうしながらも葉山はこの島に言い伝えられている話を彼は誰に話し始めた。
この島に人が住み始めて暫く経った頃、この島の浜辺に不思議な生物が打ち上げられた。
それはとても言葉で表せないほどの生き物で、神聖とも邪悪とも言える出で立ちをしていた。
その生き物を邪悪と感じた一部のものが武器となり得る物を持ちそのものに危害を加えようとした時、何ともいえない声のような鳴き声のような音を発した。
すると海から何体もの魚が現れ、その村人達を殺してしまった。
その様子に恐れた残りの村人達は神と崇めることとした。
そのモノのために瑠璃色の城を建て、魚達が出入りできる通路を作り丁重に扱うこととした。
残った村人の中から数名を生贄として、その
モノの世話係とするとどうだろう。
不思議なことにその年の村の作物はよく栄え魚も豊富に漁れるようになった。
やはり神だったのだと村人達は喜び、さらに敬うようになる。
「それじゃ、このモノがなんであれいいことだらけじゃないか」
「表向きは、な」
彼は誰の言葉に葉山は苦笑いをして返す。
そして話を続けた。
確かに、村の者達にとっては悪いことではなかった。
が、生贄にされたモノ達には苦痛の日々だった。
一度見たように、魚は人の形をしているのだ。
やがて、異種の子供達が産まれるようになったのだ。
生まれた子供達の殆どは人の形をしていたが、中には異形の姿で生まれ死んでいくものもいた。
そして、そんな生活に気が狂う生贄もいたのだ。
その話を聞いた彼は誰は眉をひそめた。
どのくらい昔のことだかわからないが、生贄といえば女性だろう。
そして彼は誰も女なのだから思わず想像でもしてしまったのかもしれない。
村の者から生贄として差し出され、異形のモノに辱められる苦痛はどれほどだったのだろうか、と。
そんな彼は誰の様子に葉山も苦い顔をする。
「それで?」
彼は誰に促され、葉山はさらに話を続けた。
生まれた子供は人の姿をしていたものだから、それを知った村の者は子供達を集めて城の外で育てることにしたという。
初めは何も問題なくその子供達は人として育てられた。
が、その子供達が大人になると変化が起こり始めた。
「もしかして、、、」
彼は誰の言葉に葉山は頷く。
そう、その異形の子供達は徐々に異形の姿へと変化していったのだ。
そして、魚達と同じ姿になると海へ帰っていったという。
勿論、中にはそうならない者や半端になりかけた者もいたというが。
これには村人達も危機感を覚えた。
このままだとこの島の純粋な人間はいなくなり、全員が海に帰ってしまうのでは、と。
そこで村人達はまた反旗を翻す計画を立てた。
今度は直接神と崇めるモノにではなく、魚達に対してである。
複数に対して手が出せないであろうことは容易にしれたため、一体ずつ確実に仕留める。
その計画の結果を言うと、半分ほどは成功したと言えた。
しかし、異形の者になったとは言えやはり元は家族だった者もいるのだ。
意思が残る元村人の協力を経て、少しだけ狩ることに成功したらしい。
が、相手は傷つけるだけでは死ななかった。
困った村人はそれらを切り刻み、あろうことかその肉を異形との混血の子供達に与えることにしたのだ。
「何ともまぁ、、、イカレた発想をしたものだね」
「時代を考えれば、、、肉に飢えてたのかもな」
呆れたように言う彼は誰の言葉に葉山は苦笑いを漏らした。
そうやって狩りをし、肉を与えていると不思議なことが起こったと言う。
ある子供は肉を食べて死に絶え、ある子供は髪や瞳の色が変わり不思議な力を手にしたのだ。
「まぁ、結論からいうと俺みたいなやつが現れ始めたってことだな。」
そう言う葉山の瞳は恨めしそうに空を睨むようにしていた。
結局、その不思議な力を持った子供を城で崇める者の生贄とする掟ができたのだ。
ただ一つ、例外として食べても変化が現れず、けれど死ぬこともしなかった者もいた。
その子供達は普通の村へと戻されることとなったのだそうだ。
そしてその一連の騒動をこれまで何度も繰り返して今の島の姿なのだ、と。
「ということは、、、結果として、ここの島民にはあの魚の血が流れているってことかぁ」
「端的に言うとそう言うことだな。あぁ、、、ここにあった。」
葉山が話を止め、崖下をのぞいている。
彼は誰も並んで覗いてみると何やら島に穴が空いているように見えた。
遥か昔、そこから崇めているモノを城へ運んだと言い伝えられている。
葉山はそう説明をつけた。
位置としてはちょうど城の裏手にあたる崖である。
「ここから椿の笛があれば、、、いや、、、でもなぁ、、、」
葉山は何か忙しなく頭を動かしているようで独り言を漏らす。
彼は誰は辺りを警戒しつつもその様子を黙って見つめていた。
今、口を開いて葉山の邪魔をすることはないとの判断からだろう。
「道は見えたのかい?」
「まぁ、、、確率は低いけれどね」
一通り、葉山の様子が落ち着いた頃合いを見計らって彼は誰は声をかけた。
葉山は彼は誰の言葉に苦笑いを交えてそう返す。
「この島の呪いの元凶を海に解き放つことが出来れば過去の亡霊も共にいなくなるはずなんだ」
そしてもう2度と城に縛られる者がいなくなる。
そう言う葉山は嬉しそうには見えなかった。
例えるならそれは悲しみの色を帯びているように思えた。
「地図にない地下通路があるんだ。」
何かを振り払うように唐突に葉山は彼は誰にそう話し始めた。
そこから潜入するルートも考えていたのだと。
しかしそこを下見するには時間が足りないため、椿達を逃す為に使えるとは思うがどうなるかはわからないと言う。
「これぞまさに神のみぞ知るってね」
「最高のフィナーレを迎えられるといいね。もちろん僕は特等席に招待してくれるんだろ?」
葉山の言葉に彼は誰はニコリと笑ってそう言う物だから葉山もつられて笑みを見せた。
「退屈はしない席になるだろうね」
そう言う葉山に彼は誰はふふふと笑って見せた。
そして2人は時間もいい頃合いだからとホテルへの帰路につくのだった。
さて、八百屋を後にした花梨と紫苑は崖へとやってきていた。
花梨は崖からあたりを見回す。
すると少し離れた田畑で数人の島民が収穫作業をしている姿が見えた。
街やお城がある方向を見ると、自転車に乗った男性であろう2人が村に向かっていることがわかる。
花梨の肉眼で確認することは難しいが、三原と薬師丸である。
公園の方からは黄色い服を着た女性が自転車に乗って街の方に行っている姿が確認できた。
特徴的な格好であるからそれが田中であることは花梨にもわかることである。
そしてお城の方から性別はわからないが2人、自転車に乗って街に向かっているようだ。
こちらも花梨の肉眼では確認できないが、彼は誰と葉山である。
遠くを一通り見渡した花梨は崖に目を向けた。
「うわぁ」
崖から見下ろした海までの距離に思わず驚きの声をあげる。
(こっそり写真撮っとこ)
そんな様子を可愛らしく思ったのか、紫苑がこっそりとスマホで花梨の写真を収めた。
(天然抱き寄せくるかな?)
写真を撮られたことに気づいた花梨はひっそりとそんなことを思ったが、そこはやはり紫苑である。
花梨にバレていないと思っているのか、写真を撮った後はさっとスマホを仕舞い込み素知らぬ顔をしている。
「.........。にこっ」
花梨は何を言うわけでもなく無言で紫苑を見つめて笑みを浮かべる。
が、紫苑は海を見つめてポーカーフェイスを決め込んでいる。
「うん、綺麗に撮れた。じゃあ帰ろうか」
「あー!サラッと!!!ししょー!そういうとこですよ!!!」
紫苑の言葉に花梨は思わずそんな声を上げた。
「あー、景色を残しておかないとと思ってね。以前来た時と変わったことがないか確かめないといけないからね」
「もう。お得意の言いくるめですか? そんな隠し撮らなくても、いつでもお写真位なら言ってくださいね?」
紫苑の言葉に花梨はイタズラっ子のような笑顔を浮かべてそういった。
だがしかし、紫苑は知らぬふりを通すつもりらしい。
「時間が無いし帰ろうか」
そう言う紫苑の顔が薄らと赤く染まっているように見えるのは夕焼けのせいなのか。
それとも花梨を意識してなのか。
「ふふ、しょーがないですね、帰りましょうか」
花梨はどこかご機嫌でそういうと紫苑はなんだかなと言った笑顔で頷いた。
そして2人は並んで自転車を漕ぐ。
夕暮れに染まった空。
昼間の暑さに熱った頬に、心地よい風が吹き始めた。
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