第78話 第2回

なまにく「終わったかと思った? 残念! 前回はただの落書き回でしたぁ~。

まだ続くよ~、書き貯め分は消化したからこっからはリアルタイムのアップになるけど。

気長によろしくね~」




◆本編開始◆




 最悪の目覚めと共にベッドから起き上がる圭。

 その動作で隣に寝ていたリーゼとミミルも目を覚ます。


「二人ともおはよう」


「おはようブルーレット」


「おはようですにゃご主人様」


「さてと今日はどうしようかな」


「特に予定は無いの?」


「うん、そうだな、屋敷に行って様子見るくらいかな。

あとは気が向いたらエッサシ村に行ってもいいけど」


「村も行きたいね」


「村に行くなら移住者も連れていきたいな、ってどうやって集めるか考えてないけど」


「それなら街の孤児とか集めてみたら? ロッカさんとかに聞いてみてさ」


「そうだな、孤児か、子供は未来の生産力につながるしな。

過疎化が進む村なら尚更子供を集めるのはありかもな。

よし、それでいってみよう」



 そしてやってきた警備隊本部。

 事務所にいたロッカに大枠の話を伝える圭。


「なるほど、移住者集めですか。

これから寒さも厳しくなりますからね。

孤児を保護するのなら協力しましょう」


「それで実際のところ、この街にはどのぐらいの孤児がいるの?」


「正確な数は把握しておりませんが、自分が見聞きした限りだと30人から50人くらいかと」


「え? そんなにいるの!」


「はい」


「だよね、別に不作の年じゃなくても口減らしってわりとあるし」


 会話に割って入るリーゼは飄々と口減らしについて語る。

 自分が経験しているだけあって、その言葉には重みがある。


「口減らしにあった子供はだいたいこの街に集まるんだよ。

それで仕事探してなんとか生活するの」


「そうなのか……」


「冬を越せずに死んでいく子供も少なくありません。

特に領主がフィッツになってからの10年は酷いものでした。

今年も徴税のあとに泣く泣く口減らしをした村がいくつかあると聞いています。

一応教会にも孤児院はありますが、収容できる人数にも限界があります」


「なるほどな、思ったよりも各村の情勢は切迫しているわけだ。

エッサシ村なんて6割吹っ掛けられたもんな。

よし、わかった!

孤児集めする前にちょっとやることができた。

俺は一旦屋敷に戻るから、リーゼとミミルはロッカと孤児集めしててくれる?

集めた孤児は一旦屋敷に連れてきて保護しておいて、バーナントさんには話を通しておくから」


「うんわかった」


「連れてくにゃー! 掻っ攫うにゃー!」


「うん、掻っ攫うとか物騒な単語出さないでね、ミミルはもう少し言葉を勉強しよう」


「それでは指示通り孤児を集めてまいります」


「みんなよろしくね」


 3人と別れた圭は領主屋敷へと戻った。



「あ、バーナントさん」


「おや? ブルーレットさん、確かお出かけになられたのでは」


「ちょっとね、野暮用ができて戻ってきた、今からもう一回領地会議開くよ」


「会議ですか」


「うん、イレーヌさんもいるよね」


「はい、執務室に居ます」


「ちょうどいいや、召集かけるよ」


「わかりました」


 バーナントと一緒に執務室に入ると、イレーヌとフィッツの妻シシルが話をしていた。


「あ、居た居た、二人とも丁度よかった。第2回領地会議だ」


「第2回?」


「うん、第2回だ、みんな食堂に集合ね」



 そして場所は食堂。

 集まった屋敷メンバーは、圭、バーナント、イレーヌ、シシル、アメル、さらにアリアの6名。

 席に着いたメンバーを見渡し圭が第一声をあげる。


「と、いうわけでぇ~、第2回領地会議を始めま~す。

ドンドンパフパフ~」


「ドンドン?」


「パフパフ?」


 軽いノリで始めた圭の発した謎の擬音にアメルとアリアが首をかしげる。


「あ~、えっと、ドンドンパフパフは魔族の言葉で『神聖な会議を開始する合図』って意味です」


「おお、そうなのですか、知りませんでした、勉強になります」


「すいません、嘘です、忘れてください」


 関心したバーナントにすぐさまゴメンナサイする某駄魔族。


「ゴホン、えーと、今日の議題は口減らしです」


「口減らしですか?」


「うん、口減らしだ」


 そんな議題を聞いてアリアが手を挙げる。


「あの、口減らしとはなんですか?」


「うーん、王族のアリアには縁のない言葉だったね。

それじゃわかりやすく問題を出そう。

村人が10人います、そして冬を越す食料は9人分しかありません。

ギリギリで9人分です、それを10人で分けると足りなくなり10人死んでしまいます。

さて一番いい解決方法はなんでしょう?」


 大人達はその答えが口減らしだとわかっているが、世情に疎い12歳のアリアがどのような答えを出すのか、興味津々で聞き役にまわる。


「えっと、他の村に食料を分けてもらうというのはどうでしょう?」


「他の村も同じように食料が足りていない状況とします」


「うう~、あ、わかりましたわ、街に働きに出る! ですわね」


「残念、不正解!

冬は街でも相対的に仕事が無くなるはずだから、仕事の取り合いになるんだよ。

そこに他の村人が入り込む余地なんてないんだ。

正解はね、村から1人追い出して村人を9人にする、だよ。

それを世の中では口減らしと言うんだ。

一般には働き手以外の人、老人や子供がその対象になる」


「うそ、そんなひどいことが実際にあると言うのですか!」


「温室育ちのアリアには初めて聞く話だろうけどさ。

残念なことに実際あるんだよ、この領地で当たり前のように起こってる。

嘘だと思うならリーゼに聞いてみるといい、あの子は実際に口減らしで村を追い出された人間だ。

それが証拠にこの街にも孤児がたくさんいると聞いている」


「そんな……」


 口元を両手で覆い驚きを隠せないアリア。


「さて、今年もいくつかの村で口減らしがあったとさっき小耳にはさんだ。

前回の会議で俺は税率を2割5分にするって言ったわけだけど。

来年からどうこうって話じゃなくて、今年の徴税がすでにヤバイんじゃねーの? って思ったわけだ。

領主としては見過ごせないない案件だよねコレ。


というわけで、何をどうするかって議論になるんだけど。

まずは今年の口減らしを元にもどしたい、それと並行して今年の終わってしまった徴税自体の見直しだ」


「終わってしまった徴税の見直しですか、可能なのですか?」


 イレーヌの問いにニヤリと笑みを浮かべる圭が言葉を続ける。


「できるかどうかなんて問題じゃない。

見せてやるんだよ、新しい領主がどれだけ変態の魔族かってのをね。

やってやろうじゃないの、領地改革ってやつをさ」


 こうして領主としての圭が動き出す。

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