第74話 村完成
そして場所はエッサシ村。
パンツ鳥から飛び降りたミミル、そして中から出てきたのは圭、リーゼ、ノーム、ニケル。
空飛ぶパンツの姿を見た村人がすぐさま村人全員を広場に集める。
「おはようございますブルーレットさん。
おや、そちらの方は?」
村長は見知らぬ顔の2人について尋ねる。
「えっと、家作りに協力してくれる大工のニケルさんと、その奥さんのノームさんだ」
「これはこれは、わざわざこのような村までお越しいただいて。
ありがとうございます」
「いえいえ、ブルーレットさんにご指名でお願いされるなんて、光栄な事ですから」
ブルーレットから直々の依頼、それは領主からの指名、そして侯爵からの指名。
両方の意味を持っていた。
それがどれほどの名誉か、ここにいる全員が理解している。
全員で場所を移動し新築現場へと向かう。
「みんなおはよう、さっそくだけど大工を連れてきた、ニケルさんだ」
「ニケルです、よろしくお願いします」
「えっとそれじゃ今日の仕事内容を決めようか。
今日の目標は井戸3つと家を30棟。それからできるだけ窓や扉を取り付ける。
大工仕事はニケルさんを中心にやってもらって、男の人何人か選んで補佐してほしい。
木材は昨日で大量に手に入ったから、今日は風魔法が使える人は木材の加工をメインでやってもらう。
それにあわせて家具も作ってもらう、扉に窓枠、ベッドにテーブル、そして椅子や収納だ。
やり方はリーゼに教えるから、それを真似して覚えてほしい。
そして今日の作業で肝になるのが土魔法だ」
説明しながら圭が取り出したのは蝶番とガラス瓶。
「上位以上の土魔法が使えるとコレが作れるらしいんだ。
鉄製品は見慣れてるからイメージしやすいと思うけど。
このガラスって呼ばれてるものも土から作り出せる。
ガラスは透明で硬さをもった壁の役割になる、これがあれば冬でも部屋を暖かくしたまま採光できる。
あと割れやすいという欠点もあるから衝撃を与えたり、落としたりしないでね。
最後に力のグループは昨日と同じで資材を森から運んだり、丸太の組み立てをしてほしい」
簡単に説明を終え、昨日でパンツを履き替えてしまった女性に能力を付与していく。
能力付与の現場を目の当たりにしたノームは、ニケルに物欲しそうなうるうるした目で何かを訴えた。
「ちょっとまて、俺はやらないからな、こんな朝っぱらから無理だ!」
ちょっと残念そうなノームさん。
それとは対称に一番ハッスルしたのはミミルとヘンリーだった。
圭は忙しく立ち回り、家のパーツをリーゼとミミルを交え村民に説明していく。
同時にニケルは男衆を集め、大工仕事の手ほどきをしながら作業を進める。
懸念していた建築金物の作成とガラス板の作成もうまく行き。
そのガラスに木製のフレームを取り付け、スライド式のガラス二枚窓が各家にはめ込まれてていく。
ガラス窓の外側には観音開きの木板の扉がつけられ、これで木とガラスの二重窓が完成した。
窓や扉の制作が軌道に乗ったら、次は家具の加工班を編成する。
この世界にはない梯子付きの2段ベッドや、簡単なカラーボックスのような棚、そして引き出しタイプの収納。
それらを説明しながらリーゼが試作品を作り上げる。
リーゼが風魔法で木材を切り刻み、それをトンカチを持った男衆が追いかける格好となった。
「さてと、木製の物はこれで増産できるな。
あとは布製品かな」
圭は建設現場の隣に広がる草原に巨大なパンツを出した。
その大きさ、30mくらいはある。
「やっぱりね、大きくした分だけ生地が厚くなってるな」
乗り物として使ってるパンツ鳥は10m程度。
それでも本来のパンツの生地の厚さから考えたら、人を乗せて運ぶには生地が薄すぎるのだ。
しかしパンツ鳥はちゃんと人を運ぶことができていた。
スキルの説明にも生地の強度は変わらないと書いてあったが。
そのままの強度なら人を乗せて運んだりしたら当然だけど裂けてしまう。
そこで圭が想定したのはパンツを大きくするというのは、構成繊維そのもを大きくするのではないか、ということだ。
繊維が太くなれば生地の厚みも大きくなる、繊維自体の強度は同じでも太くなればそれだけ相対的な強度は増す。
手にとってみたパンツの生地は厚さ5cmぐらいになっていた。
綿100%での分厚い生地、これを裁断して重ねればベッドのマットレスとして使える。
この巨大なパンツはいくらでも作れる。
カーテン、掛布団、マット、シーツ、タオル、用途に合わせて厚みを変えたパンツを出せば。
現代日本と変わらない備品が手に入る。
変形スキル、こうして考えるとなかなかに便利だ。
「一応、シエルに感謝だな」
厚さ5cmの生地を切るには裁ち鋏では切れない、風魔法で切るしかない。
風魔法が使える者を呼びベッドサイズに裁断していく。
そしてベッドシーツ用のパンツ、掛布団用のパンツ、などを生成しては裁断させる。
あとは縫製の得意な村民に仕上げをしてもらい、この村にはなかった高級なベッドが作られていった。
「ねえあなた、わたしこの村に住んでみたいわ、とても楽しそうだもの」
「いいのか? 領主様……いやブルーレットさんからの頼みだけど。
ノームがイヤなら断ろうと思っていた。
でもこれだけの物を見せられたら、どうしても大工として住みたいって思ってしまうんだ。
一緒に来てくれるなら、これほど嬉しいことはない」
「だからですわよ、あなたの喜ぶ顔が見れるのなら、わたしは何処へだって着いていくわ」
「ノーム、ありがとう、愛してる」
「あらあら、わたしもよニケル」
夕方の広場では村あげての食事が出されていた、ちょっとしたお祭り状態。
その片隅でノームとニケルがお互いの意思を確認していた。
本日の成果。
井戸3つ。ログハウス30棟。
窓やドアなのど完成した家20棟。
家具類完備15棟。
日用布製品完備3棟。
それでもまだ丸太は大量に余っていた。
おかげで森が大分切り開かれてはしまったが。
「村長さん、とりあえずだけど、今後の方針を決めようか」
「はい」
「家が新しく40棟、今年はこのぐらいでいいと思う。
人集めはぼちぼちやっていくとして。
明日からは家の内装や家具をどんどんやっていく。
あと2日もあれば40棟全てが住める状態になると思う。
それと余った丸太で倉庫を作ろうと思う。
街道を挟んで東と西に分けてそれぞれの集落に共同の倉庫を3つずつ。
備品、薪、食料の3つの倉庫だ。それが2か所で計6棟。
さらに欲を言えば大浴場も作りたい。
石は簡単に生成できるから、石造りの浴場だ。
鉄製品が作れれば風呂用の焚き釜も作れるし、手動のくみ上げポンプも作れる。
薪倉庫の脇に井戸を掘って、浴場を作ってみようよ。
特に冬場は重宝するから」
「おお、この村にそんな設備が出来るだなんて、夢みたいです」
「移住者を集めるなら他の村にない魅力がないとね。
これだけの設備なら王都にも引けをとらないと思うよ」
「本当です、貴族様の住まわれるお屋敷と変わらない家だと思います」
そして3日後の夜。
家40棟、倉庫6棟、そのうちの東側の倉庫に併設する形で、井戸付きボイラー室付きの浴場が完成。
全ての家はすぐにでも人が住めるようになっていた。
備品の倉庫には大量のベッドマットやタオルをはじめとした布製品。
さらには日用品の鉄製品、ガラスで作られた瓶や食器類、木製の食器や日用品。
それらがびっしり詰まっていた。
もはや鉄とガラスの価格崩壊必死である。
「みんな張り切りすぎだろコレ」
薪倉庫は薪で埋め尽くされ。食糧庫は今は何も入ってないが、住民が増えたら活用する予定だ。
「とりあえず俺ができるのはここまでだな」
「ブルーレットありがとね、村のためにがんばってくれて」
「リーゼの故郷だからな、それに村長さんは俺にとって最初の友人だから。
この村は思い入れがあるんだよ、みんなが喜んでくれたらそれだけ嬉しいし」
「ミミルも頑張ったですにゃ! ご主人様ご褒美がほしいですにゃ」
「ご褒美なら新品のネコパンツ毎日あげてるじゃないか」
「グリグリ1時間を要求するにゃ!」
屋敷の地下室で悲愴に暮れてたミミルはどこにいったんだ。
すっかり能力付与の儀式がクセになったミミル。
日ごとに『もっと強くにゃご主人様』と、要求が増していった。
「グリグリは1日1分までです。ていうか、村の件が片付いたから能力付与はもう使わないよ」
「がーん! そんな、殺生な、それじゃミミルはこれから何を生きがいに生きていけばいいんですにゃ」
「それは自分で考えなよ」
「ご主人様~」
そんなやりとりをする3人に話しかける夫婦。
「ブルーレットさん、いろいろとありがとうございました。
これで仕事もひと段落です、2人で話し合いました、ノームもこの村が気に入ったみたいで。
2人で移住することにしました」
「うんうん、ありがとね、村長さんも絶対喜ぶよ。
それじゃ街の家は引き払ってこっちに引っ越しだね。
引っ越しなら手伝うよ」
「それは助かります、馬車もなにも無いので」
「馬車? パンツだよ、パンツで運ぶから」
「パンツ? あの飛ぶパンツですか?」
「うん、そのほうが早いから」
「あらあら、それは楽しみですわね」
次の日、朝からパンツで引っ越しをした。
こうしてこの村に新たな住人が2人増えた。
新築したログハウス初の住人が誕生したのだ。
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